環境省は、宮城県石巻市と登米市、南三陸町にまたがる海や里山で自然体験を楽しめる「フィールドミュージアム」の整備を目指している。東日本大震災からの復興支援として昨年創設した「三陸復興国立公園」のプロジェクトの一環で、自然を生かした交流人口の増加や地域活性化を後押しする。
想定するのは石巻市北上、登米市津山、南三陸町戸倉の3地区で、イヌワシの生息地として知られる翁倉山を中心としたエリア。津山から北上にかけては北上川が流れ、河口に追波湾が広がる。北上から戸倉までは海に面し、北は志津川湾を望む。
各地区には拠点施設となるビジターセンターを設ける。北上は北上川のヨシ刈りやサケ、アユの遡上(そじょう)観察、津山は山林での植樹や間伐、イヌワシ観察、戸倉は志津川湾で養殖体験や海水浴など、地域の特性に即したプログラムを体験できるようにする。
環境省は地元自治体と協議しながら、エリア内の地権者や漁協に理解を求めていく。プログラム実施には住民やNPOなどに関わってもらう考えで、里山の保全や雇用創出も図りたいという。
自然を面的に捉えて海と里山のつながりを学ぶ構想は、環境省として初の試み。ミュージアムの開設時期は未定だが、現在は南三陸金華山国定公園に入っている対象エリアを2015年度内に三陸復興国立公園に編入し、工事に着手することを見込んでいる。
東北地方環境事務所の似田貝諭自然保護官は「里山や川、海に囲まれ多様性に富んだ地形で、自然のつながりを学ぶのに最適な地域。地元住民にも観光客にも良さを知ってもらい、活性化を支援したい」と話している。
[三陸復興国立公園] 東日本大震災からの復興支援のため、環境省が2013年5月、岩手、宮城両県に広がる陸中海岸国立公園に青森県の種差海岸階上岳自然公園を編入して創設した。南三陸金華山国定公園も加わる予定。エコツーリズムの推進や自然歩道「みちのく潮風トレイル」の設定など、農林水産業活性化や自然環境の保全を柱に掲げる。