石炭火力へのODA廃止…政府方針、脱炭素化支援へ

政府は、海外で新設される石炭火力発電所に政府開発援助(ODA)を原則拠出しない方針を固めた。二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭火力から、環境にやさしい再生可能エネルギーの導入支援にODAを振り向け、国際社会の脱炭素化に貢献したい考えだ。  政府は今年7月、環境性能の低い石炭火力発電所の輸出は公的支援の対象外とする方針を打ち出した。ODA見直しは、こうした流れを踏まえたものだ。  今後は、相手国から石炭火力の案件で円借款などのODAによる支援要請があっても受け付けない。CO2の排出を抑える最新技術が導入される場合など、「極めて限定的なケース」(外務省幹部)に限って支援対象とする。こうした技術の導入は新興国や途上国にとってはコスト面などからハードルが高く、新たな石炭火力へのODA拠出は事実上なくなるとみられる。  菅首相は2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げ、国連関係の会議でも実現に向けた決意を表明している。ODAを脱炭素化の取り組みに注力することで、環境を重視する姿勢を国際的にアピールする狙いがある。  石炭火力は、安価なエネルギー源として途上国を中心に導入が進んでいる。日本は18年度の円借款(1兆3705億円)のうち、5%程度を石炭火力の導入支援に充てた。ベトナムやバングラデシュなどアジア圏が主な支援先となっている。  政府はODAの枠組みを使い、途上国や新興国向けに風力や地熱といった再エネ技術の導入のほか、温室効果ガス削減の取り組みを重点支援する。12月に改定した「インフラシステム海外展開戦略」で、インフラ輸出の受注額(18年は25兆円)を25年に34兆円まで増やす目標を掲げた。ODAを呼び水に、アジアやアフリカなどで脱炭素技術の輸出拡大を目指す。 ■「環境シフト」世界の潮流  石炭火力発電所の建設に政府開発援助(ODA)を原則拠出しない方針を固めたことは、世界的な脱炭素化の潮流に沿ったものといえる。  日本は昨年、国際NGOから不名誉な「化石賞」を与えられた。石炭火力削減に後ろ向きとの理由からだ。国内で非効率な石炭火力を2030年度までに休廃止する目標を掲げる一方、ODAで海外輸出を続けてきた。ちぐはぐな対応が国際社会に負の印象を与えた面は否めない。  「質の高いインフラ(社会基盤)」の推進をうたう日本が、ODAで脱炭素化に本腰を入れてきたとは言いがたい。対外イメージ向上のためにも、ODAの「環境シフト」は急務だ。(政治部 森山雄太)

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