ママの働き方や家計を左右する「130万円の壁」
世間では「103万円の壁」の隠れてやや影が薄い「130万円の壁」。しかし、こちらのほうが働くママや家計にとってはずっと厚い壁です。
ママのパート等による収入が年間130万円以上になると、パパ(会社員)の扶養から外れて、自分で社会保険料(健康保険料や年金保険料など)を納めないといけなくなるのです。
ママの年収が130万円未満の場合
ママの収入が年間130万円未満だと、社会保険料、所得税、配偶者控除は次のような扱いになります。
【1】社会保険料
パパの扶養家族(被扶養者)として、ママの健康保険料と年金保険料はパパが加入している社会保険制度から負担されます。ちなみに、ママが扶養に入っていても外れても、パパの社会保険料は変わりません。
【2】所得税
ママの所得税は、収入から給与所得控除65万円と基礎控除38万円を引いた残りに5%をかけて算出します(所得税とは別に収入が100万円を超えると、本人に住民税が課税されます)。
例:[ママの給与収入129万円-給与所得控除65万円-基礎控除38万円]×所得税率5%=所得税1万3000円
※復興増税は考慮せず
【3】配偶者控除
ママの収入が103万円以内なら、パパの給与から配偶者控除として38万円を差し引けて、パパの所得税が少なくなります。
ママの収入が103万円を超えると、配偶者控除は受けられません。しかし、ママの収入(103万円超~141万円未満)に応じて配偶者特別控除(控除額38万~3万円)が適用され、パパの所得から控除されます。
ママの年収が130万円以上の場合
ママの収入が130万円以上になると、上記の【2】と【3】の考え方は変わりませんが、【1】の社会保険料をママ自身で負担することになります。会社の社会保険に加入するか、社会保険がない会社だったら市町村の国民健康保険と国民年金に加入しなければなりません。
ママの収入が130万円になり、会社の社会保険に加入した場合に負担する厚生年金保険料と健康保険料は、概算で年間約15万円です。
年収129万円まではゼロだった社会保険料が、年収が130万円になると約15万円引かれ、手取りは約115万円に減ってしまうことになります。もちろん所得税・住民税もかかります。
ちなみに社会保険料は、現在の給与や賞与(厳密には、標準報酬月額と標準賞与額)に保険料率をかけて算出します。事業主と従業員が半分ずつ負担をしますから、この計算で求められた保険料の半分を負担することになります。
●平成26年11月現在の各種保険料率
( )内の金額は給与30万円あたりの従業員負担分の保険料
・厚生年金料率 17.474%(2万6211円)
・健康保険料率 9.97%(1万4955円) ※1
・介護保険料率 1.72%(2580円) ※2
※1 健康保険料率は東京都の協会けんぽの場合
※2 保険料の負担は40歳から
また、パパの会社の扶養手当も、ママが扶養から外れることによって無くなることもあります。この取り扱いは会社によって違いますから、パパに確認してもらいましょう。
重い社会保険料の負担、しかし大きなメリットもある
このように計算してみると、年収130万円未満と130万円以上では、手取りがずいぶん少なくなって損をしてしまうと考えがちです。しかし、130万円以上の年収になって社会保険料を負担するようになると、次のようなメリットもあります。
●厚生年金に加入した場合は将来受け取る年金が増える
年収130万円で1年あたりに将来受け取る厚生年金額は年間約9000円増えます。10年間働くと9万円、30年間働くと27万円、受給する年金額が増えることになります。
●会社の健康保険に加入すると、加入者本人しか適用されなかった「傷病手当金」や「出産手当金」などの給付を受けられる
傷病手当金とは、仕事中以外のケガや病気で会社を3日連続で休み、給料が支払われないか従前の60%未満になった場合に支給されるもの。休業4日目から最高1年6カ月間、それまでの給料(標準報酬日額)の2/3までが支払われます。
出産手当金とは、産前産後のために休業となり、給料が払われないか従前の60%未満となった場合に支給されるもの。給料(標準報酬日額)の2/3までが支払われます。
●自立する社会人として信用力が高まる
ローンなどの審査などに通りやすくなることも考えられます。
このように、年収130万円未満のママが130万円以上になると、手取りが減る可能性はあるものの、それ以上のメリットもあります。メリットの面もしっかり加味して検討したいものです。
年収が130万円以上になりそうなら、頑張ってドンドン稼ぐことを目標にするほうが、こまかい損得を考えるより前向きな気がしますね。