社員旅行というと、ベテランのビジネスパーソンほど良い印象を持っていない人が多いかも知れませんね。昔はどの会社も当たり前のように実施していた一つの「行事」のようなものでしたが、2000年台前半を境に一気にやる会社が減りました。
それがここにきて、スタートアップの若い企業を実践する等、また注目が集まり始めています。賛否両論の社員旅行…ウチの会社はどうするべきなのか?千葉商科大学国際教養学部専任講師(労働社会学)で、働き方をテーマに執筆や講演をする常見陽平さんに話をききました。
【写真】写真で昭和の社員旅行を紹介。新鮮?懐かしい?昔は当たり前だった
社員旅行が変わりつつある
社員旅行は想像通り、少し前の社員にとって、うれしいものではありませんでした。職場の人間関係が旅行先でも続くと思うと、気が抜けない人の方が多いのは当然でしょう。そのような心理的な負担とあわせて、会社への経費負担の重さもあって、バブル期をピークに減少してきていました。
しかしながら、ここ数年増加傾向にあります。理由としては多様な人が企業に入ってくるようになったことが一つの要因ではないでしょうか。新卒以外の中途採用等が増えたことにより、キャリア形成や文化の違いによるチームビルディングを必要とする企業や組織が増えてきました。
バブル期の目的は、「リフレッシュ」の色が強い傾向がありました。典型的なパターンですと、温泉地に行って宴会場を貸し切りにして宴会をするというイメージですね。
ただ、最近は特に「研修」や「教育」といった目的を持つようになり、組織単位でまとまった時間を確保できる社員旅行という形が注目を集めるようになってきているのではないかと思います。
六花亭の社員を優遇する取り組み
少し変わった取り組みをしている企業で、マルセイバターサンドで有名な「六花亭」の事例をご紹介させていただきます。六花亭では、行きたいコース、目的を企画して仲間を募り、6人以上集まれば社内旅行として成立します。会社から旅行費用の70%(年間20万円まで)が補助金として支給されます。有給休暇や休日を利用する社内旅行、遊ぶときはとことん遊び、リフレッシュしているそうです。
社員が自主的に「研修」にも「リフレッシュ」にも活用することができるようになっています。社員を大切にしている企業ならではの取り組みだと思います。
また、社員旅行とは毛色が少し違いますが、日本航空では2017年から「ワーケーション」という働き方を推奨しています。ワーケーションとは仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語で、国内外のリゾート地や帰省先、地方などでテレワークで業務を行うことです。休暇先や旅先で仕事をするという新たな働き方により、早朝や夕方以降の時間を社員が自由に過ごすことで、業務への活力につなげることが狙いとのことです。
社員旅行は「目的」を明確に
では、いろいろな形がある社員旅行、やった方がよいのでしょうか?やらなくてもいいのでしょうか?
私は「目的」を明確にして実施することをおすすめします。例えば「コミュニケーションの活性化」「組織の活性化」だったり、「リフレッシュ」に振り切ってもいいと思います。
社員旅行のメリットは、目的によっては様々な組織の課題が解決できるという点と併せて社内の「インフォーマルな関係」を作ることができるという点だと思います。言い換えると仕事以外の接点を作ることができるということです。
これによって、コミュニケーションが活性化するだけでなく、社内の人材資源の再発見をすることができます。中途採用で探そうと思ってスキルや知識を持っている人が実は社内に居た!というのは、実はよくある話です。また、組織によってはあまり活躍できていない人が、刺激を受けることや、これをきっかけに異動することで活性化することもあったりします。
ただ、忘れないでいただきたいのが実施にあたっては「楽しめるかどうか?」という点です。最悪目的が達成できなくても楽しければ参加者にとって有意義ですが、つらい旅行になると典型的な「昭和の因習」に逆戻りしてしまいます。
しっかりと目的を定めた上で、ただ忌み嫌うのではなく「社員旅行」というツールも楽しく使いこなしていってください。