社員200人規模の中小企業で働く5つのメリット

 新卒採用にしろ、中途採用にしろ、依然として、就職希望者の大企業志向は強いといわれている。もちろん、スムーズに入社することができ、満足がいく仕事ができているのなら、何の問題もない。そのまま、突き進むほうがキャリアアップにもつながるだろう。
 だが、職場や仕事に不満があり転職しようかと迷ったら、可能な限り、視野を広げて新しい勤務先、そして職を探す努力をしてほしい。できれば、1つの選択肢として、200人規模の会社にエントリーすることをすすめたい。中小企業法によると、社員数(正社員)が200人ぐらいの規模の会社は、その多くが「大企業」ではなく、「中小企業」となる。
 だが、筆者がこれまで取材をしてきた経験から言わせていただくと、あまり知られていないがこの規模の会社にも様々な魅力がある。仕事をしていく上で、もちろんデメリットもあるが、今回はそのメリットについて紹介していきたい。
1.職場が動いている
 社員数が200人規模の会社は、社員数数千人規模の会社と比べると、辞めていく人の割合が多い。それは、中小企業の白書が示すデータなどでも明らかだ。辞めていく理由のひとつには、賃金など労働条件の不備がある。給料が世間相場より相当低いようなら、たしかに問題だとは思う。だが、辞めていく人が多いというのは、著名なコンサルタントの言葉を借りると「職場が動いている」ことを意味する。例えば、中途採用などが頻繁に行なわれていたり、人事異動が急に行なわれて、何かと刺激が多い。筆者の実感からいうと、動きが停滞しがちな大企業より、そういう意味で刺激が多く、面白いのではないかと思う。
2.チャンスが増える
「職場が動いている」ということは、すなわち、チャンスが増えていることでもある。例えば、同じ部署で急に誰かが辞めたとする。その穴埋めを、あなたがする場合もあるだろう。もちろん、仕事量が増えるのだから、素直に喜ぶことはできないかもしれない。腹の立つことだってあるだろう。だが、そういう状況下で、真剣に仕事に取り組んでいれば、上司や周囲からの信頼を得られ、認められる可能性も高い。自分が望んでいた部署や仕事に関わることができるようになるかもしれない。大企業にいるよりも、こういった機会は断然多いはず。ある意味で、恵まれた環境にいるといえるだろう。
社員200人規模の中小企業で働く5つのメリット
3.組織全体をリアルに把握できる
 会社の規模が数千人になると、経理や経営企画の部署でない限り、組織のしくみや仕掛け、からくりなどを隅々までリアルに把握することは至難の業。これは、私の経験論でもある。まさに「組織の歯車」として働き続けなければならない。もちろん、社員数が200人規模の会社でも、社員として働く以上、「歯車」であることに変わりはない。だが、組織全体を見渡すことができる規模だから、多少、そういった不満は和らぐはずだ。
 会社全体が見えてくるからこそ、例えば、人事異動や人事評価などの理不尽さも、ある程度、正当なものだと捉えることができるかもしれない。働いていると、何かしらの不満はたまるもの。ようは、その理由や理不尽さが、きちんと理解できるかどうかが大切なのだ。ただし、200人規模の会社で働いても自ら、組織を知ろうとしない限り、いつまでたってもわからないだろう。
4.マイペースで仕事ができる
 200人規模の会社の人事評価や人材育成制度は、大企業などに比べると、甘い。筆者の経験から言わせてもらうと、そういった傾向はある。中小企業の場合、幹部が部下に対しあまりに厳しくしすぎると、辞めてしまう可能性もあるが、新たに人を雇う余裕がない場合があるため、大企業に比べると社員に甘い傾向がある。
 つまり、採用、定着、育成の一連の流れが、大企業と異なるため、自ずと、社員に対して強くなれないのである。ただ、急激に業績を上げているベンチャー企業は、これに該当しない。こういう会社は、社員数の規模に関わらず、社員に対して常に厳しい。社員に甘いということは、人材育成ができない会社だ、と否定する見方もあるが、裏を返せば、マイペースで仕事を覚え、マイペースで仕事を進めることができるというわけだ。こういう環境をのぞむ人にとっては、最適かもしれない。
5.自分の人生を真剣に、大切に考えるようになる
 倒産、経営破綻、廃業、吸収合併、リストラなどに遭遇する可能性は、大企業よりはるかに高い。そうなると、収入が減り、深刻な状況に陥りやすくなる。当然、生活にも影響が出る。だが、ピンチにぶつかると、会社とのかかわりを見つめ直したり、人生を真剣に変えようとしたりするもので、まんざら、これは悪いことではない。
 もうひとつのメリットを挙げるとすれば、200人規模の会社は大企業などと比べ、入社のハードルは低い。内定を得ることがなかなかできない場合、こういう会社も選択肢に入れるべきだ。社員数が100人以下でも、もちろん、1~5までが該当する会社はたくさんある。だが、経営状態が不安定で、人材育成以前のところで壁にぶつかっていないか確認するようにしよう。そういった意味でも「200人規模」の会社のほうが奨めやすいのだ。
文/吉田典史
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ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。

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