神戸の繁華街・三宮地区を中心に高級和牛ブランド「神戸ビーフ」の看板を掲げる飲食店が急増していることを受け、食肉の生産者や流通業者らでつくる認定団体「神戸肉流通推進協議会」(神戸市)が年内にも、神戸ビーフの流通調査に初めて乗り出すことが20日、関係者への取材で分かった。外国人観光客に人気の神戸ビーフは価格高騰で希少性が高まっており、偽装など悪質なケースがないか調べる。
神戸ビーフは血統や飼育環境などに厳しい条件がある「但馬牛」で、霜降りなどの肉質について基準を満たすものだけを同協議会が認定している。同協議会は神戸ビーフを扱う店の登録制を目指し、登録店にはブロンズ像を配布して保証するなどしているが、登録自体は任意のため、各飲食店の実態は把握できていなかった。
同協議会は今後、卸売業者などと協力し各飲食店の神戸ビーフ取扱量を調査。取扱量の多い店には協議会への登録を促すほか、小規模店にも協議会が権利を持つ「神戸ビーフ」「神戸牛」などの商標について、使用の許諾申請を求める方針。また調査の結果、神戸ビーフと偽って販売や提供している店があれば指導し、地域の農林水産物や食品をブランドとして保護する政府の「地理的表示(GI)保護制度」に基づいて農林水産省に通報することも検討する。
同協議会は「ブランドは信用が大切。神戸ビーフの価値をさらに高めるためにも、特に観光客が多く訪れる三宮地区の実態把握は必要」としている。
未登録・安すぎる店急増
「神戸ビーフ」を提供する飲食店が急増している背景には、外国人観光客からの人気の高さがある。神戸肉流通推進協議会の国内の登録飲食店は外国人観光客の増加に合わせて平成21年の31店から現在は117店まで拡大しており、多くの店が外国人向けのPRを強めている。
神戸ビーフの専門店約40店を展開する吉祥グループ(神戸市)は、昨年10月に神戸・三宮に神戸ビーフの案内窓口をオープンした。専門知識を持つ外国人スタッフらが客の要望に合わせて7カ国語で店を案内する。同社によると、大阪では客の外国人比率が約9割に上る店もあるといい、担当者は「外国人観光客の後押しがあって店舗をここまで拡大できた」と話す。
一方、神戸ビーフのもとになる但馬牛の生産は年間6千頭台程度で推移。23年度に輸出が解禁されたこともあって需要過多が続き、競りでの神戸ビーフの枝肉相場は10年前の約1・8倍となる1キロ4700円程度まで高騰している。神戸ビーフを入手することが難しくなり、三宮のステーキ店などでは値上げが相次ぐ。
こうした状況の中、三宮周辺では近年、同協議会に登録せずに「神戸ビーフ」の看板を掲げる店が急増。老舗店が独自の基準で神戸ビーフを名乗っていたケースもあり、登録店関係者からは「市場価格を考えると安すぎる店もある」「協議会は神戸ビーフのブランド管理を強化すべきだ」などの声が上がっていた。(西山瑞穂)