禅僧が明かす、なぜか「運がいい人」たちが心がける「大事な習慣」

ニューズウィーク』日本版の「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた禅僧で、庭園デザイナーとしても活躍している枡野俊明さん。『大地黄金の開運術』は、そんな枡野さんが大切にしている「禅の教え」が詰まった一冊だ。中でも「大地黄金」という教えは、コロナ禍で暗くなりがちな心に光が射し込むこと間違いなし。人生が好転するこの開運術について、ご本人にたっぷり語っていただいた。 ———- 【写真】ゲッターズ飯田が忠告、「運気を下げる」から今すぐ止めるべき行動

仏様に開運をお願いしよう

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 依然収束しないコロナのおかげで苦労されている方も多いと思います。商売の先行きが見通せない、仕事や収入が減ったという方や、運悪くリストラされてしまったという方もおられるかもしれません。本当に悩ましい事態です。  仏教では、運が好転することを、仏様の導きと考えます。  たとえば、私が住職を務めている建功寺(神奈川県横浜市)では、昨年2月末で本堂の再建工事を終えました。工事開始から6年半の歳月を費やしましたが、これがコロナ禍に工事を始めたのであれば、完成するのは難しかったでしょう。  こうした運のよい出来事に遭遇したとき、私たちは「仏様の導きがあった」と考えます。  「開運」というと神様にお願いするものと思いがちですが、そんなことはありません。仏様に開運をお願いしても、まったくおかしくないのです。  実際、以前の日本では、正月に神社とお寺の両方をお参りするのが一般的に行われていました。年が明けたら近くの氏神様にお参りし、その後、菩提寺に向かって、本堂に祀られているご本尊様と、ご先祖様たちが眠っているお墓の前で、新年のご挨拶をするのが習いだったのです。  「お蔭様で無事に新しい年を迎えることができました。ありがとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします」と手を合わせる。誰もがそこから一年のスタートを切ったわけです。  また、仏教の各宗派では「心願成就」「病気平癒」「家内安全」……などを願い、祈祷や護摩行(護摩を焚いておこなう祈祷)を行っています。これも運が良くなることを祈念するものです。このように、開運を仏様にお願いすることは、まったくおかしくないのです。

「報恩感謝」が人生の基本

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 仏様に開運をお願いするうえで、不可欠な条件が一つあります。それは、「常に感謝の心を忘れない」ことです。  ここで、禅では命をどのように捉えているかについてお話ししましょう。「命」はご先祖様(仏様)が脈々と受け継いできてくれた結果として、いま、自分のものとして、そこにある。これが禅の「命」についての捉え方、考え方です。  あなたには両親がいます。その両親にもそれぞれ両親がいますね。そのようにして一〇代さかのぼれば一〇〇〇人以上、二〇代さかのぼると一〇〇万人を超えるご先祖様たちがいるのです。  そのうち一人でも欠けていたら、いま、そこに、あなたの命はありません。決して大袈裟ではなく、ご先祖様たちとの“奇跡的”なご縁の連なりによって、わたしたちは命をいただいているのです。  「報恩感謝」という仏教の言葉があります。ご先祖様からいただいている恩に気づき、感謝するとともに、その恩に報いていくような生き方をしなさい、という意味です。  生きるうえでの基本がこれだと私は思っています。生きる基本とは、開運を願う土台でもあることは、いうまでもありませんね。まず、そのことをしっかり心にとめておいてください。

いいことを引き寄せる朝の習慣

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 ご先祖様への感謝は、ぜひ日々の習慣にしていただきたいと思います。私は毎朝、次のような形で実践しています。  毎朝、午前四時半に起床すると、身だしなみを整えて、洗面をすませます。それから各部屋の窓をすべて開けて、新鮮な空気を取り込みます。そして寺の門を開け、その足で歴代の住職の墓地にお参りに行きます。  墓地では、ご開山様をはじめとする歴代住職方の名前をあげ、「おはようございます。今日も無事に目覚めることができました。ありがとうございます。一日何ごともなく過ごせますように、どうぞ、お見守りください」と心で語りかけます。  いわば、それが私のご先祖様たちへの感謝の伝え方です。国内外の出張などで留守にするとき以外、この一連の流れの行動を欠かすことはありません。  ご先祖様に向き合うときに、いちばん大切なのは、「素」の自分になることでしょう。  短い禅語があります。  「露(ろ)」  文字どおり、どこにも包み隠すところがなく、すべてがあらわになっている、ということです。まさに素の自分ですね。人は誰でも、社会的な地位や肩書きをもっていますし、地域や家庭のなかでの役割といったものもあるでしょう。ご先祖様の前に立つときは、それらを一切合切下ろし、“露”になってください。  別の言い方をすれば、雑念を捨てて心を空っぽにする、といっていいかもしれません。それでこそ、感謝の気持ちがまるごと伝わるのです。そして、ご先祖様の存在を感じられるのです。  もう一つ、短い禅語を紹介しましょう。  「如在(にょざい)」  おわすがごとく、という意味です。実際はすでに彼岸に旅立ってしまって、その場にはおられないのだが、まるでおられるかのようにその存在を感じる、ということです。露になることで、そして、感謝を伝えることで、ご先祖様をそのような存在として感じることができるのです。

努力すれば人生が黄金に輝く

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 最後にもうひとつ、私の好きな禅語をご紹介します。それは「大地黄金」というもの。意味は、自分がいる場所で、主体的に、力いっぱい、ものごとに取り組んでいけば、その場所が黄金に輝いてくる、ということです。  自分を輝かせてくれる場所が、はじめからどこかにあるわけではないのです。どんな場所であっても、そこで自分のできるかぎりを尽くすことによって、その場所が輝き、さらに自分も輝いてくるのです。  仕事に引き寄せていえば、“自分の力を発揮させてくれる仕事”が用意されているわけではない、ということです。ご縁をいただいた仕事のなかで、自分の力を思い切り発揮することによって、その仕事が自分にしかできないものになっていくのです。  仕事にはスポットライトが当たる表舞台のものもあれば、陽が当たらない裏方の仕事もあります。そこで、「裏方仕事では力の出しようがない、表舞台なら全力を出せるのになぁ」などと考えていたら、かりに表舞台に立っても力は出せませんし、ストレスを抱えることにもなります。  裏方仕事も力いっぱい、表舞台でも力いっぱい。それしか、ストレスを蹴散らし、仕事を楽しむすべはありません。  いま現在、思い描いていた夢とはちがう状況に追い込まれているという方も、どうか「大地黄金」の禅語を心に刻んで、あきらめずに努力を続けていってください。そうすればきっと、いつの日か大地は黄金の実りに輝くのです。

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