福島から山形への避難者、自立への決断を迫られる

 福島第1原発事故による県外避難者の受け入れ数が最も多い山形県で、ホテルなどの2次避難所の閉鎖が11月末に予定され、避難者が自立への決断を迫られている。経済的な事情などから避難所を出ることに二の足を踏む人が多いとみられるが、県の借り上げ住宅制度の申込期限は10月末。県は「制度が使えなくなれば自立のハードルはますます上がる」と、早めの自立を呼び掛けている。
 山形県内への避難者は現在約1万2600人。ほとんどが福島県からの避難者で、うち約1万1400人が民間住宅などに入居している。ホテルや旅館に身を寄せる2次避難者は216人(6日現在)で、原発事故発生当初に山形県に避難し、体育館などの1次避難所から移ってきた人々が大半だ。
 福島県が8月下旬、山形県内の2次避難者に実施した聞き取り調査によると、「福島に戻る」と答えた人は全体の34%、「山形に残る」は46%で、残る約2割の2次避難者は「決まっていない」と回答した。生活費を工面する見通しが立たないといった理由で、自立に踏み切れない人が多いらしい。
 山形県寒河江市のホテルに家族5人で身を寄せる渡辺理明さん(41)は、緊急時避難準備区域の指定が解除された南相馬市原町区からの避難者。
 「子どもたちのことを考えるととても戻れない」と、寒河江市内で賃貸住宅を探しているが、条件に合う物件はなかなか見つからない。避難生活で体調を崩して休業中なこともあり、「先行きが不安だ」といら立ちを隠さない。
 山形県に駐在し避難者支援を担当する福島県の平信二主幹は「少しでも事故以前の生活に近づけるようにと自立を勧めているが、思うように進まない。東京電力の賠償範囲が不明確なことも、判断を遅らせている要因のようだ」と話す。
 2次避難所から自立する場合などに利用できる山形県の借り上げ住宅制度は、最大6万円の家賃を最長で2年間、県が肩代わりする仕組み。応募数が予想以上に多く、3度にわたり期限を延長した。
 山形県生活文化課の岩間誠司課長補佐は「需要があれば制度の延長も検討するが、県内の民間住宅はどんどん埋まっており、供給できるかという問題もある。できるだけ早く制度を活用してほしい」と話している。

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