福島の全魚種が出荷可能に 本格操業へ議論に弾み

国の原子力災害対策本部は25日、福島県沖で漁獲されるコモンカスベの出荷制限を解除した。東京電力福島第1原発事故に伴い出荷制限を受ける県沖の魚介類はゼロになり、全魚種の出荷が可能になる。県沿岸の試験操業から本格操業に向けた議論に弾みがつくとみられ、県の漁業復興は節目を迎えた。

 エイの一種のコモンカスベは2016年8月に出荷制限が解かれていたが、試験操業で19年1月に漁獲された個体から放射性セシウムが国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える161ベクレルが検出され、再び制限された。
 19年2月~20年1月、放射性物質濃度検査を1008検体で実施。このうち1001検体が検出下限値以下となり、検出された7検体も最大17ベクレルと基準値を大きく下回った。県漁連は来月にも、コモンカスベを試験操業の対象に加える見通し。
 県沿岸では第1原発から10キロ圏内を除き、操業日数や漁獲規模を限定して出荷先の評価を探る試験操業が行われている。43魚種にかかっていた出荷制限の解除が進み、県漁連は本格操業の議論を始めるよう県下の3漁協に求めている。
 試験操業は19年の水揚げ量が前年比10.6%減の3584トンに低迷し、原発事故前水準の13.8%にとどまった。本格操業に向け、漁獲量の拡大が課題となっている。
 出荷制限がなくなったことについて、県水産課の担当者は「県産水産物の安全性を発信できる。本格操業の議論の後押しになることを期待したい」と話した。

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