福島沖風力2基撤去へ 国、民間引き継ぎ断念

福島県沖で浮体式洋上風力発電の実現可能性を探る国の「福島浮体式洋上ウインドファーム(大型風力発電施設)」の実証研究で、所管する資源エネルギー庁が模索してきた民間事業者への引き継ぎを断念し、大型風車2基など関連設備を全て撤去する方針を固めたことが分かった。国は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に貢献しようと、約9年間で計約600億円の国費を投じていた。
 実証研究は最終年度を迎えている。これまでに整備した風車2基(出力5000キロワット、2000キロワット)や洋上変電所など計11設備の取り扱いを決めるため、同庁が引き継ぎの希望者を募って事業計画を審査していた。
 関係者によると、企業連合などが引き継ぎを希望したが、国が設けた長期事業性などの条件を満たさず実現に至らなかった。撤去費は数十億円と見込まれ、同庁は2021年度にも解体に着手する。
 風車は当初3基設置された。出力が最も大きい7000キロワット風車は不具合が目立ち、18年にいち早く撤去が決定。残る2基のうち稼働率が商用水準に達したのは出力が最小の2000キロワット風車のみで、技術的な課題が顕在化したとみられる。
 同庁の担当者は、取材に対し「得られたデータは価値がある」と実証研究の成果を強調。一方、県関係者は「風車が十分に回らなければ満足なデータも取れない。残念ながら県内の産業への寄与も見当たらなかった」と不満を漏らした。
 同庁は16日、県や漁業団体、有識者らを交えた協働委員会の会合を県内で開催し、方針を説明する。
 実証研究は世界初の浮体式洋上ウインドファームの事業性を検証するため同庁が12年に開始。福島での新産業創出と国内の洋上風力の導入促進を目指した。
 政府は洋上風力を主力電源の一つに成長させたい考えで、30年までに1000万キロワットの導入目標を掲げる。

浮体式洋上風力発電 海に風車を浮かべて発電する方式。遠浅な海域が少ない日本は海底に固定する着床式より浮体式が適しているが、建設に多額の費用を要する。自然エネルギーの導入を加速させる有望策として各国で研究開発が進む。国の試算では、開発可能な洋上風力のエネルギーは15億キロワット超と太陽光などに比べ圧倒的に多い。

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