国内最高気温を更新し、猛暑日(35度以上)や大雨が続いた今夏。9月を前に秋の味覚が気になるが、猛暑の悪影響は出ないのか。【江畑佳明】
秋といえばサンマ。今年は猛暑で日本近海の海水温が上昇して魚群が少なく、高値で取引されている。例年、最盛期には店頭に1匹100円以下で並ぶが、現在は同300~700円のところも。
京王百貨店新宿店の鮮魚コーナーでは、北海道産が2匹で780円。売り場担当者は「今年は『取れない、高い』でなかなか売れない。旬のものを多くの方に食べていただきたくて、企業努力で200円値下げしました。脂が乗ってくるのはこれからですが、大きくて身がふっくらしておいしい」と話す。大手スーパー・イオン(本社・千葉市)でも価格は198~298円。全国さんま漁業協会(東京都港区)は「例年9月上旬には水揚げが増える」と期待する。
23~26日に集中的な豪雨に見舞われた米どころ、熊本県。JA熊本経済連によると、豪雨の被害はなかったが「今年のイネの生育は例年より1週間ほど早い。昨年、日本穀物検定協会の『米の食味ランキング』で全国1位に輝いた品種『森のくまさん』は、暑さへの耐性がなく、猛暑が今後も続くと米粒が乳白色に濁る高温障害にならないかが気になる。夜間の気温も下がってくれないとコメの甘みが出にくくなる」と心配する。
猛暑による品質低下は各地で懸念され、石川県ではJAなどで作る営農協議会が、早場米のコメを昨年より1~2日早く刈り取るよう農家に要請した。
柿の生産量全国一で、シェア20%強を誇る和歌山県。同県伊都振興局農業振興課によると、強い直射日光を受けると生じる「日焼け」の被害が出ている。「日焼け」は果実表面の細胞が死に、茶色く変色。そこだけ成長しなくなるため実の形が崩れ、ひどいと出荷できなくなる。わせの柿の収穫は9月中旬から。担当者は「今年は日焼けが多いようです」とため息をもらす。
気になるのがマツタケだ。全国一の生産地、長野県の県林業総合センターの担当者は「採取される山の地中の温度は高くても21~22度で、8月の猛暑の影響はあまりない。気になるのは9月の残暑。高温の日が続くと、マツタケのつぼみが腐ってしまう」と話す。
気象庁の予報では、今後1カ月の気温は全国的に例年並みから高めで、関係者はしばらく気をもみそうだ。