日本へのカジノ導入を阻止したい勢力のわなにまんまとハマってしまったのか? 日本でのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業への参入を目指していた中国企業側から数百万円の利益供与を受けたとして、収賄容疑で25日に秋元司衆院議員(48)が逮捕された事件を巡り、秋元容疑者は“ハメられた”と疑う声も聞かれる。現職国会議員の逮捕で、IR反対論が強まりかねない状況に。これにほくそ笑んでいるのが、実は中国のカジノ関係者だというのだが…。
「いや~、中国人はしたたかですねえ」と嘆息するのは、日本にIRを造ろうと活動してきた推進派の永田町関係者だ。一体どういうことなのか。まずは事件を振り返ってみると――。
秋元容疑者は2017年8月から18年10月まで、内閣府副大臣としてIRを担当。観光施策を所管する国土交通省副大臣も兼務していた。副大臣就任直後には、秋元容疑者は沖縄県で行われたシンポジウムで中国企業「500ドットコム」社の幹部と同席。同9月下旬に500社側から秋元容疑者に300万円が供与されたとみられている。
その後、500社はIR招致を目指していた北海道留寿都村を視察し、秋元容疑者も同村を訪問。18年2月中旬には500社側が秋元容疑者を北海道へ家族旅行に招待し、約70万円相当の利益供与があったという。
一方、特捜部は500社側が無届けで海外から現金数百万円を持ち込んだとして外為法違反容疑で捜査。秋元事務所や秋元容疑者の元秘書自宅などが家宅捜索されていた。
そして特捜部は、IR事業に便宜を図ってほしいと知りながら利益供与を受けた疑いがあるとして秋元容疑者を逮捕。現職国会議員の逮捕は10年ぶり。500社側からも贈賄容疑で3人が逮捕。19年11月に北海道の鈴木直道知事がIR誘致見送りを表明。500社による日本のIR事業参入は頓挫した格好となっていた。
失敗に終わったにもかかわらず、「中国にハメられた」と前出の永田町関係者は主張する。
「この逮捕で日本国内のIR反対派が活気づいている。ただでさえ、依存症や利権などネガティブな印象を持たれるカジノなのに、実現が危ぶまれる状況になってしまいました。これで誰が得をするのかというと中国のカジノ関係者ですよ」
中国のカジノといえば特別行政区のマカオのものが有名だ。
「マカオのカジノからすると日本にできるカジノはライバル。地理的に近いわけで、客を日本に取られてしまう恐怖があるのです。中国側が秋元氏に目を付けて、日本のIRに参入できるならそれでいいし、できなくても秋元氏を今回のように“売れ”ば、日本にカジノを造らせないムードをつくれる。どっちに転んだっていいわけです」(前出の永田町関係者)
実際に野党は秋元容疑者の逮捕を受けて、年明けの通常国会にカジノ禁止法案を提出する考えを表明。マカオのカジノからみれば好都合の展開になっている。
もともと秋元容疑者は、決してⅠR事業のキーマンではなかった。
「ⅠR推進派が活動し始めた最初のころ、秋元氏はかかわっていません。軌道に乗り出してきてからシャシャリ出てきた印象ですね。行儀のいい人ではないと聞いているので、カネのにおいを嗅ぎつけたのかも」(自民党関係者)
本紙7月6日発行1面で、東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された“黒い紳士”の交友関係に大物政治家がおり、特捜部が注目していると報じたが、何を隠そうこの政治家が秋元容疑者だった。これらの交友関係は芸能界やスポーツ界にまで及んでおり、波及する可能性もある。
秋元容疑者は25日午前10時ごろにツイッターを更新し「この度は、このような事態となりお騒がせしておりますことを、お詫び申し上げます。しかし、私は、不正には一切関与しておりません。そのことは引き続き主張してまいります」と無実を訴えた。
特捜部は25日、事件の関係先として、千葉県にある自民党の白須賀貴樹衆院議員(44)と宮城県にある自民党の勝沼栄明前衆院議員(45)の地元事務所を家宅捜索した。2人は17年12月、秋元容疑者とともに500社の本社を訪れていた。
2020年の政界は年明けからIR疑惑一色になる。