秋田・市街地のクマ出没 猟友会「発砲すれば猛批判を浴びかねない」対応の難しさ浮き彫り

 秋田市土崎港西3丁目のスーパー「いとく土崎みなと店」で男性従業員を襲い、店に入り込んだクマの捕獲は丸2日を要した。地元猟友会員は「悪条件が重なった」と振り返り、猟銃使用が規制される市街地で対応する難しさを浮き彫りにした。国で発砲要件の緩和に向けた議論が進む中、専門家は多様なケースを想定した訓練や責任の明確化など事前の取り決めが必要と訴える。(秋田総局・高橋諒、柴崎吉敬)

 「住宅密集地で銃を撃てる状況になかった。商品棚があって外からは店内も見えづらかった。長期戦を覚悟した」。市みなと猟友会の伊川武志会長(77)は、市の要請で駆け付けた11月30日朝の心境を振り返る。

 周辺は住宅やホテル、飲食店が立ち並び、店外に見物人が集まっていた。「万が一にも発砲すれば、猛批判を浴びかねない状況だった」。持参した猟銃を使うことはなかった。

 食品が陳列されている状況を考慮し、猟友会は箱わなの餌も工夫。リンゴを半分に割り、はちみつの量を多くして匂いを際立たせた。

 クマの市街地への出没が全国で相次ぐことから、環境省は建物に入り込んだ場合など条件付きで銃器の発砲を認める鳥獣保護管理法改正の議論を進めている。

 北海道では、要請で出動した猟友会のハンターが猟銃所持許可を取り消されたのを「妥当」とした10月の札幌高裁判決を受け、猟友会が協力要請を辞退するケースもあるという。

 市街地に出没した野生動物への対応を研究する酪農学園大(北海道江別市)の佐藤喜和教授(野生動物生態学)は「事故が起きた場合の補償や責任の所在を事前に明確化しなければ、ハンター側にリスクが偏り、速やかな対応にはつながらない」と指摘。「自治体や警察、猟友会が連携し、あらゆる事案を想定して訓練しておくことも重要だ」と主張する。

スーパーで捕獲後も目撃情報 秋田・土崎で警戒続く

 秋田市土崎港西3丁目のスーパー「いとく土崎みなと店」でクマが捕獲された2日の夜、近隣でクマとみられる動物が新たに目撃された。現場は店から北東約800メートルの距離。秋田臨港署や地区の学校は3日も警戒を続けた。

 署などによると、2日午後7時50分ごろ、秋田市土崎港中央6丁目の「きららとしょかん土崎図書館」駐車場にクマのような動物がいたと、通りがかった男子中学生が110番した。体長は70~80センチという。

 目撃地点から約500メートル離れた土崎小(児童167人)は、保護者に登下校時の付き添いを依頼。学校入り口付近では署員らが盾を構えて警戒した。

 長野純教頭は「クマなのかは不明だが、危険の恐れがある以上は安全確保に努める」と気を引き締めた。

 図書館の約500メートル北東にある港北小(児童618人)も保護者に送迎を要請したほか、児童には休み時間に校庭に出ないよう呼びかけた。

 いとく土崎みなと店を運営する伊徳(秋田県大館市)は3日、7日午前9時に店を再開すると発表した。消毒や清掃を徹底し、店の商品を入れ替えるとしている。

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