島根県浜田市で、秋田県南特産の漬物「いぶりがっこ」を製造販売し、地域活性化に生かす取り組みが進んでいる。試作に挑んでいる農家の女性グループが2月1日、秋田県横手市山内から名人を招いて初の講習会を開き、本格生産と地域間交流をスタートさせる。
いぶりがっこは煙でいぶした大根のぬか漬け。秋に収穫した大根を戸外に干せない豪雪地帯で、いろりの周りで乾燥させたのが始まりとされる。積雪が比較的少ない島根県では、漬物用の大根を薫製にする習慣がなかった。
横手市出身の高橋正也さん(35)が2012年春、人口定住策を探る島根県の嘱託研究員として採用され、いぶりがっこによる活性化を発案。山あいの浜田市弥栄(やさか)地区で食品加工や直売所の運営を手掛ける「やさか加工グループの会」(会員15人)が手を挙げ、試作を始めた。
メンバーの一人、王子幸子さん(65)は「当初、薫製のにおいに違和感があったが、かみしめるほどに味わいが出た」と魅力を語る。
大根をいぶす小屋は、協力を申し出た里山再生を目指す住民団体が無償で建てた。まきに使う桜の枝などを提供し、火の管理も担う。
試作から3年目となることし秋、本格生産を目指す。漬物を意味する「おこうこ」をもじった「いぶし香香(こうこう)」と名付けて直売所などで販売する予定だ。
1年目、2年目は大根のいぶし方や漬け方などの試行錯誤が続いた。2月1日の講習会には、高橋さんの母で横手市山内に住む幸子さん(63)を招く。幸子さんは、山内で毎年開かれる「いぶりんピック」で、いぶりがっこの味わいの最高賞を受賞した経験がある。
弥栄地区では、いぶし小屋でイノシシの肉や川魚を薫製にする構想も出て、薫製食品による地域おこしがにわかに活気づいているという。
横手市と浜田市は直線距離で約900キロ。結び付けた高橋さんは「過疎化に悩む地域同士が長所を学び合えば、活性化につながるはず」と交流促進に期待する。