秘密保全法案 漏洩、懲役10年以下 政府方針、自衛隊法も厳罰化

 政府が今国会で成立を目指す「秘密保全法案」(仮称)に関し、外交・安全保障など国家の「特別秘密」を漏らした国家公務員らへの罰則を「10年以下の懲役」とする方針を固めた。複数の政府関係者が明らかにした。日米相互防衛援助協定(MDA)に伴う秘密保護法に準じる措置。政府は国会議員に守秘義務を課すことも検討しており、国民の「知る権利」を侵害する恐れもある。
 現行の国家公務員法は、公務員に職務上知り得た情報に関する「守秘義務」を課すが、罰則は1年以下の懲役か50万円以下の罰金。一方、MDA秘密保護法や、在日米軍に関わる刑事特別法は機密漏洩(ろうえい)に「10年以下の懲役」を科す。自衛隊法では防衛秘密漏洩に「5年以下の懲役」を規定しており、「バランスを欠く」との指摘もあった。
 秘密保全法案では、(1)国の安全(2)外交(3)公共の安全と秩序の維持-の3分野で特に秘匿すべき情報を「特別秘密」に指定。対象は、機密情報に接する可能性のある都道府県警察や、ロケット開発など安全保障に関わる独立行政法人、民間事業者、大学にも広げる。
 罰則を「10年以下の懲役」とすることに合わせ、自衛隊法の罰則も「10年以下の懲役」に引き上げる。
 ただ、法案策定作業では、特別秘密の対象を列挙する「別表」の作成が難航している。対象を自衛隊員に限定する自衛隊法と違い、特別秘密の対象が多岐にわたるため、別表を作成することは、何が機密事項なのかを内外に明示することにつながるからだ。
 政府は当初、対象を政務三役に絞る方針だったが、岡田克也副総理は2日に続き16日も「国会議員が外交・安保政策で共有した秘密を漏らすならば一定のペナルティーがあるのは当然だ」と述べ、対象を特別秘密に接する国会議員に拡大する方針を表明した。これも与野党の反発は避けられない見通しだ。
 外交・安保上、国家機密の漏洩防止は重要だが、法案には、政府による恣意(しい)的な情報隠蔽(いんぺい)を可能とする危険性も潜む。日本新聞協会は昨年11月、「政府や行政機関の運用次第で憲法が保障する取材・報道の自由や国民の『知る権利』を侵害する恐れがある」として法制化に反対する意見書を藤村修官房長官に提出した。
【用語解説】秘密保全法案
 行政機関の重要な秘密を漏らした公務員らへの罰則強化が狙い。平成22年9月の中国漁船衝突事件の映像流出を受け、政府は同年12月、仙谷由人官房長官(当時)を委員長とする検討委員会を設置。下部組織の有識者会議が昨年8月の報告書で制定を求めた。

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