北海道積丹半島のボタニカル(草根木皮(そうこんもくひ))を使ったクラフトジンが、東北の先陣を切り仙台市で販売されている。手掛けたのは同市出身の岩井宏文さん(51)。道外で初めてのセミナーを地元で開き、「仙台を皮切りに日本中で支持されるお酒にしたい」と誓う。
昨年6月に発売したのは「火の帆(ほのほ) KIBOU」。岩井さんが社長を務める「積丹スピリット」の最初の商品で、北海道に自生するオレンジ香のアカエゾマツの新芽がキーフレーバーだ。仙台では6月に取り扱いが始まった。
岩井さんは仙台一高から北大工学部に進み、学生時代は積丹町で過疎集落のまちづくりを研究。農林水産業のコンサルタント会社を自身で設立した。2016年に同町から農地を活用した産業の調査を委託され、クラフトジンと向き合うことになった。
積丹半島を植生のプロたちと歩き、香りのある植物の多さに可能性を見いだした。「豊かな植生を持つ日本だからこそ植物を漬け込んで造るお酒の魅力をもっと知ってもらいたい」。3年後には積丹スピリットが発足し、「気がついたら社長になっていた」と笑う。
同社は5ヘクタールの農場で原料生産から製造まで手掛ける。火の帆はオンライン販売で女性客を中心に好評を得て、出荷本数は1年で約1万本に達した。常温で水と1対1で割るのがお薦めと言い、ロックもいける。
開発には東京・新宿で薬草酒中心のバーを営む世界的バーテンダーの鹿山博康さん(37)も協力。「北海道のボタニカルを集め、ロマンと意気込みが感じられる」と仕上がりを語る。
6月27日に仙台市内であった飲食店関係者へのセミナーでは岩井さんがこれまでの歩みを説明し、鹿山さんがカクテルを紹介した。
岩井さんは「いくつかの偶然が重なり、道外でのセミナーの第1弾を仙台で開催できた。今後は全国行脚に力を入れたい」と展望を語る。火の帆は1本(500ミリリットル)5940円。仙台では青葉区のリカネスト国分町店で販売。泉区のグリーンマート桂店も今月取り扱いを始める。