空き家の増加に歯止めがかからない。
総務省の2013年「住宅・土地統計調査」(速報集計)によれば、約820万戸と過去最高を記録した。総住宅数6063万戸の13・5%を占め、「7、8軒に1軒」といった割合だ。
空き家の増大は景観が悪化するだけでなく、倒壊の危険や犯罪を誘発する。荒涼とした町並みが広がれば、住民の流出は加速し、地域社会の崩壊にもつながる。
空き家は2つに大別される。1つは「問題ない物件」だ。賃貸・売却用に建てたが需要を見誤り、入居者が見つかるまでの一時的な空き家となっているものだ。別荘などもこのグループに属する。
もう1つは「深刻な物件」だ。単身高齢者が施設に入ったり、死亡したりして管理が行き届かなくなったケースだ。同調査によれば、分類困難なものも含め、こうした「放置された空き家」は318万戸を数える。
◆管理組合の維持困難
空き家と聞くと、「朽ち果てた一軒家」のイメージが強いが、実はマンションも少なくない。総務省が2008年の前回調査を分析したところ、この時点の空き家総数757万戸のうち、6割にあたる462万戸がマンションなどの共同住宅だった。大半は賃貸だが、「放置された空き家」も72万戸近くに上る。
マンションの場合、空き家が増えると管理組合が維持できなくなる。管理体制が悪化すれば借り手も減る。この点、賃貸であっても「深刻な物件」に転じやすい。
所有者が遠方にいる「投資型」などは管理がおろそかにされがちで、未入居の増加に拍車をかけているとの指摘もある。賃貸も含め1棟の半数が入居していないマンションも珍しくなくなった。こうなると物件価値も低下し、スラム化の道を歩み始める。
マンションの解体は戸建て以上に大変だ。建物が頑丈で費用がかさむだけでなく、所有者の利害が複雑に絡むからだ。今後、大都市圏を中心に「スラム化した老朽マンション」が増大すれば、新たな社会問題として国民にも重くのしかかることになろう。
私的財産である住宅は本来、所有者が責任をもって管理すべきものだが、地域の安心・安全にかかわるため、条例を定めて独自の対策を進める自治体は少なくない。
移住希望者に情報提供する「空き家バンク」の取り組みも広がってきた。解体して更地にすると固定資産税の優遇措置が受けられなくなるといった税制面での課題の解消や、持ち主を探すために市町村が税情報を活用し、立ち入り調査できる仕組みの導入に向けた動きも出ている。
こうした目の前の課題への対応も重要だが、空き家問題の根本解決には「なぜ増えたのか」という理由に立ち返ってみる必要がある。
◆供給過剰が最大要因
最大の要因は住宅の供給過剰だ。1968年の同調査以降、住宅総数は総世帯数を上回っている。2013年も818万戸の超過である。これでは、住まなくなったからといっても、立地や使い勝手がよくなければ簡単に売却や賃貸とはいかないだろう。
しかも、少子化で相続する子供が減った。相続人がいても、若者世代が都会に出たまま帰らず“田舎の家”には価値を見いだせないというケースは多い。少子化の進行に伴い、さらに空き家が増えると予想される。
ところが、空き家解消に逆行するような動きも続いている。国土交通省によれば、昨年度の新設住宅着工戸数は4年連続増の約99万戸(前年比10・6%増)だ。過去の推移をみても、特殊要因のあった年を除けば着工戸数の減少は見当たらない。
背景には日本人の「新築志向」の強さがある。政府も住宅ローンの控除など新築住宅の開発を促す政策を推進してきた。住宅取得が進めば、家電製品や家具など需要が伸びるとの計算だ。歴代政権にとって、分かりやすい「景気浮揚策」だったのである。
持ち家率が6割を超した現状においては、新築住宅の推進政策はその“歴史的役目”を終えた。空き家をこれ以上増やさないようにするためには、中古市場整備へと政策シフトを図ることだ。解体ばかりでなく、「社会の資源」として再活用する視点も求められる。移住者向けや公共住宅へのリフォームを後押しすることである。
過度な「新築志向」を改めない限り、われわれは大きな荷物を背負うことになる。