きれいな空気の部屋で暮らしたい-。そんな思いからインフルエンザ対策や、今夏の猛暑の影響で大量飛散が予測される来年の花粉に向け、空気清浄機を購入する消費者の動きが顕著だ。通常、春先に売れる季節家電だが、一年中の代表的な花粉を抑える高機能製品などが増えたことで、通年商品化していく傾向にある。(堀口葉子)
◆高機能で販売好調 東京都千代田区のヨドバシカメラマルチメディアAkibaの空気清浄機売り場を訪れた。平日にもかかわらず客でにぎわう。
人気は、加湿機能付きの空気清浄機。30代の女性は、「年々ウイルスや花粉が気になるので、家の空気はきれいにしたい」と話す。
調査会社のGfKマーケティングサービスジャパン(東京都中野区)によると、通常、空気清浄機の販売台数が落ち着く4~7月期に前年同期を上回ったほか、11月も最多販売台数だった前年同月に比べて4%増えた。12月も前年以上で推移しているという。
背景について、山田早穂(さほ)アナリストは、「インフルエンザの流行や、前年の5~10倍と予測されている来年の花粉飛来量の報道で、消費者の関心が高まっているとみられる。また、機能向上で空気清浄機のニーズは通年に広がっている」と推測する。
そこで、今冬を「空気清浄機の普及拡大の年」とするパナソニックは、機能性を再度検証した。
同社は今月2日、水に包まれた微粒子イオン「ナノイー」による花粉抑制のメカニズムを発表した。ナノイーは、空気中の水分に高電圧を加えて発生させたイオンで、直径約5~20ナノ(ナノは10億分の1)メートル。空気イオンより6倍長寿命で、繊維の奥まで入り込む特徴をもつ。
◆アレル物質を抑制 すでに、スギ花粉のアレル物質を抑えることが分かっており、今回は新たに年間の代表的な花粉が対象。実験を行った信州大学の木村睦准教授によると、ヒノキ(2~6月)、カモガヤ(5~7月)、ブタクサ(8~10月)の各花粉アレル物質にナノイーを1時間噴射したところ、アレル物質が低減したという。
実験は7~8月、45リットルのボックスのなかで行われ、ナノイーを噴射していない各アレル物質のタンパク量と比較した。
木村准教授は、「今回、ナノイーが各アレル物質を抑制することを確認した。今後も実験対象を増やして検証していきたい」と話す。
「この結果により、商品価値の高さをアピールする」というのは山内俊幸・パナソニック電工電器R&Dセンター技監。ナノイー搭載の加湿空気清浄機「うるおいエアーリッチ FーVXFシリーズ」4機種(想定価格は3万円から)などを通年商品として販売強化を図るという。
日本電機工業会(東京都千代田区)によると、空気清浄機の平成21年度の国内での出荷台数は、新型インフルエンザなどの影響で、前年度比49・2%増の217万台と過去最高になった。
とはいえ、内閣府の消費動向調査では、空気清浄機の国内普及率はまだ36・6%にとどまっているのが現状で、今後も拡大が予想される家電の分野だ。