公立諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀さんは、お笑いタレントやだじゃれ名人にだじゃれを言わせて、何人かに聞かせ、双方の脳の働き具合を調べたことがある。それによると、「笑わせようとしている人の脳活動は極めて大きかった」。だじゃれを聞いた側については、「笑ったときは脳が活性化していた」という。つまり笑っても脳トレになるし、笑わせても脳トレになるというわけだ。
では、だじゃれを聞いているとき、脳は何をしているのか。例えば「布団が吹っ飛んだ」というだじゃれ。「これを面白いと感じるには、『布団』が脳に残り、『吹っ飛んだ』が脳に残り、その2つの言葉をマッチングさせる作業が必要になります」。
このマッチング課題を解くのに不可欠なのが、「ワーキングメモリ」だ。何らかの作業をするための一時的な記憶機能で、情報をいったん脳にメモし、それを取捨選択したり、つないだり、予測したり…と、高度な知的作業を行う。だじゃれの面白さを理解するときも、このワーキングメモリが働いているのだ。
Q.だじゃれで笑って脳が活性化するのはなぜ?
A.共通要素を見つける課題を解いているのと同じ
掛け言葉の最初の言葉を脳にメモし、次に出てきた言葉と一致することが分かって、面白いと感じる。だじゃれの理解は、脳にとって共通要素を探す課題を解くのと同じだ。
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Q.笑いが脳トレになる理由は?
A.脳のワーキングメモリが活性化するから
情報を一時的にメモし、何らかの作業を行うのが脳のワーキングメモリ。目の前の出来事や聞いた話の「何が面白いか」を考えるとき、ワーキングメモリが働く。
Q.笑うのと笑わせるのとではどちらが大きく活性化する?
A.笑わせるとき! 大笑いなら笑うときも活性度は高い
反応を予想しながら物語を作り、言葉を選ぶ。笑わせる側の脳はフル回転で、篠原さんの実験でも活性度は高かった。だが、身もだえするような大笑いなら、運動の指令を出す脳も働くので、活性度は高くなる。
(イラスト/千野エー)
「詳しい情報を知りたい方は、日経おとなのOFF 2019年2月号誌面でどうぞ。」
篠原菊紀さん
公立諏訪東京理科大学情報応用工学科教授
専門は応用健康科学、脳科学。「遊び」「運動」「学習」など日常的な場面での脳活動を調査。脳トレ関連の著書多数。ブログ『「はげひげ」の脳的メモ』で脳に関する情報を発信中。