夏に続き電力供給不足が見込まれる“節電の冬”を前に、食品・飲料各社が「冷え対策」としてショウガ成分を前面に出した商品展開を加速している。新商品だけでなく従来品のショウガ含有率を高めるほか、百貨店が独自の売り場を設ける動きもあり、新たな市場が生まれる気配が見え始めている。
「とても満足できる商品に仕上がった」。キリンビバレッジの担当者がこう強調するのは、ショウガ配合の新しいブレンド茶「ぽっぽ茶」。健康茶の新ブランド「からだ想い茶」の第1号商品として11月に発売する。3年後に年間1000万ケースの販売を目指す新ブランドの“先兵”として、500ミリリットルと280ミリリットルの2種類を展開する。
同社の調査によると、近年は運動機会の減少や入浴スタイルの変化から、20~40代の男女のうち3割以上の平均体温が36度未満となっている。加えて今冬は節電の影響で「寒さ対策」が消費のテーマになるとみられる。毎日飲む飲料に「体を温める効果がある」と認知されているショウガを配合すれば、健康志向が高い消費者に訴求できると判断した。
このほか、従来もショウガを使った食品を出しているメーカーも、「ここが稼ぎ時」とばかりに攻勢をかける。
ショウガを研究する“社内部活動”の「生姜部」を持つ永谷園は、ショウガがメーンのふりかけ「きざみ生姜」を9月5日に発売。また、人気の「『冷え知らず』さんの生姜シリーズ」から「『冷え知らず』さんの生姜チャイ」を限定発売する。クラシエフーズは、人気商品「しょうが湯」で「大辛」を新発売。従来比9倍というショウガ含有量が売りだ。
小売りでも、売り場展開の軸にショウガを据える動きが出ている。小田急百貨店は新宿店本館(東京都新宿区)の化粧品売り場で、夏場に並べていた涼感アイテムに代わり、ショウガを配合したハンドクリームやバスソルトなどを集めたコーナーを設けた。関連商品で前年比2割増の売り上げを見込んでいる。担当者は「厚着したくない女性も、塗るだけで手足の血行がよくなり、むくみ防止にもなる」とPRしている。(佐久間修志)