築100年の小屋をわが家に 駅前空き物件“劇的”改修中

 空き店舗や空き家が目立つ宮城県白石市のJR東北線白石駅前で、市内の不動産管理業渡辺敬太さん(32)が自力で建物を大規模改修する「セルフリノベーション」に取り組んでいる。築約100年の古い小屋を自宅に改造中で、「市街地再生の一つの事例になればうれしい」と提案する。
 渡辺さんが大規模改修に挑んでいるのは、白石駅の西口にある木造平屋の建物150平方メートルのうち西側の80平方メートル部分。
 東北線上野―仙台間の開通(1887年)後、間もなく作業小屋として建てられたらしい。何度かの改修を経た後に住宅として使用され、渡辺さんが2009年2月にリノベーションを始める以前は、10年間ほど空き家だったという。
 最初に天井や土壁など内装の解体を始め、柱がむき出しの骨組みの状態にした。外壁のトタンもはがして黒い板を張り直し、内部には遮音シートや断熱材を敷き詰めた。
 耐震壁の設置やシロアリの退治などは専門業者に依頼したが、「自分で手を掛けた分だけ愛着が生まれます」と渡辺さん。台所やトイレなど水回りのタイルは一枚一枚自分で貼っている。新たに屋根裏を利用してロフトも設けた。
 渡辺さんは大学を卒業してIT企業へ就職した後、家具作りの技術を習得するため仙台市の建具店に勤務した。08年には仙台市内の築35年以上の賃貸マンションを自らリフォームし、自作の家具を置いて一般公開した経験を持つ。
 実家がある白石市へ戻ると、駅前に空き物件が増えたことに気付いた。建物の構造に詳しくなれば家業の不動産管理業にも役立つため、自社物件を自分で大規模改修することにした。
 「日々挑戦」と語り、作業は平日の夜や週末にこなす。建物の改修自体はこの春にも終わるが、家具も含めて思い通りの家が完成するのは夏以降になりそうだ。
 渡辺さんは「空き家は店舗や文化施設にもリノベーションできる。住んだ人の歴史が残る建物は機能的ではないが、リスクを理解して再生すれば特別な付加価値を持つ」と話している。

タイトルとURLをコピーしました