米国でバカ売れして悲鳴の富士重工 スバリストの新型車評は

為替の追い風や地道なコスト削減の成果によって業績好調の自動車メーカー。だが、「クルマがバカ売れして生産が間に合わない」と、純粋な販売増に嬉しい悲鳴を上げるのは、このブランドぐらいではなかろうか。富士重工業の「スバル」車である。
 といっても、車が売れているのは日本ではなく米国でのことだ。自動車専門誌の記者が解説する。
「米国向けにサイズを大きくした『レガシィ』や『フォレスター』などの人気が高く、2013年の米国での販売台数は前年比約9万台増の42万台になる見通しです。ただ、吉永泰之社長が中間決算の会見で『1年で9万台も増えるとは思っていなかった』と打ち明けるなど、急激な販売増が同社の生産能力を逼迫する事態になっているんです」
 世界販売の約半分を米国市場で稼ぐ富士重だけに、すでに米国の生産子会社(スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ)の生産能力を2016年末に現在の27万台から40万台に増強する計画を発表済みだ。
 そんな米国頼みの富士重も決して日本市場を軽視しているわけではない。東京ビッグサイト(江東区有明)で開催中の「東京モーターショー2013」では、レガシィの後継車種となる日本向けの新型ワゴン『レヴォーグ』を初公開した。
 モーターショーの報道公開日に姿を見せた吉永社長は、こう意気込みを語った。
「私どもスバルを支え、愛していただいているお客様のことを、最大級の敬意を持って“スバリスト”と呼んでいます。このような呼び名があることは私たちスバルの誇り。このレヴォーグは、まさにスバルを愛する日本のスバリストのために生み出されたニューモデルです」
 ならば、気になるのが熱烈な日本のスバリストたちのレヴォーグ評だ。
「スバル車は万人受けするデザインではないから、逆に長年乗っていると愛着が沸いていたのに、レヴォーグは他社のワゴン車に似ていて少しガッカリした」(40代男性)
「ダウンサイジングした1600ccのターボエンジンと、60リットルの燃料タンクで1000km走れるという効率のよさが魅力」(30代男性)
「衝突回避システムのアイサイトがバージョンアップ(衝突回避の速度差が30kmから50kmに向上)していると聞いて、運転支援の能力を試してみたい」(50代男性)
「車の性能は文句ないのですが、価格がまだ発表されていないので乗り換えるかどうか決めかねています」(30代男性)
 では、専門家の評価はどうか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が話す。
「レヴォーグがこれまでのレガシィワゴンよりも日本人好みのコンサバな形をしているのは、幅広い年齢層に売りたいと考えているからでしょう。かつてステーションワゴンブームに火をつけたスバルですが、いまはそのカテゴリー自体が小さくなっているので、この車をきっかけに、一部のスバリストだけでなくスバル車全体のブランド価値を高めようという戦略です」
 肝心の性能や乗り心地については、井元氏も太鼓判を押す。
「1600ccの4WDターボ車でも2000ccより速いパフォーマンス、そしてアイドリングストップ機能やスバル開発陣の粋を集めたアイサイトなど、いまのスバルにできるすべての“調味料”が詰まっているワゴンなので、一定の人気は出ると思います。こうした評価が広がれば、スバルのプレミアムブランド的な地位はより高まり、スバリストも増えていくでしょうね」
 レヴォーグの発売は来春。2014年1月4日から先行予約を受け付けるという。果たして日本でも「売れすぎる」悲鳴を上げることができるか。

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