経営危機後も募集 宮城・蔵王の会員制ホテル預託金未返還問題

 宮城県蔵王町の会員制ホテルの預託金未返還問題で、ホテルがことしも新しい会員を募り、預託金の拠出を受けたことが分かった。同町の経営者男性(67)は近年の経営難を認めていて、法律の専門家は「経営危機が分かって預託金を集めるのは詐欺行為に当たる可能性がある」と指摘している。
 ホテルは、小規模で中央資本ではない地元の有限会社が営んでいる。
 会員の話では、仙台市の高齢の女性がことし春、預託金30万円を同額の入会金とともに支払って入会した。預託期間は5年間で、満期時に預託金全額が一括返還される規約になっている。以前からホテルを利用し、経営者から入会を勧められたという。
 別の仙台市の女性もことし、入会金、預託金約30万円ずつの契約で会に入った。経営方針に疑問を持ち、解約を求めたが、ホテルは応じていない。ことしの入会はほかにも複数件確認されている。
 経営者によると、会員の募集は1996年ごろに始めた。2000年ごろに経営が下降線をたどり、09年に客が急に減って経営が著しく悪化したという。
 専門家は「預託金は返還が前提。経営危機を認識した上で預託金を募るのは『返す気がなくて集め、だまし取ろうとした詐欺に当たる』という指摘を受ける可能性がある」と話している。
 経営者は河北新報社の取材に対し、「会員募集は08年ごろに打ち切った」として、ことしの入会契約を否定。「詐欺に当たることはしていない」と述べている。
◎「債権者の会」29日に設立
 ホテルの預託金未返還問題で、被害を訴える元会員らが21日、仙台市青葉区のアエルで会合を開き、「債権者の会」をつくることを決めた。29日午後に青葉区の市戦災復興記念館で設立総会を開く。
 元会員や現会員ら約60人が参加した。会の設立のほか、団結して預託金の返還を経営者に求めることを決めた。ホテルを残す道を探るかどうかについても話し合った。
 元会員からは「経営者に返還を何度請求しても応じてもらえず、誠意がない」「会員権を紙切れにしないためには、どうすればいいのか」という声が上がった。
 現会員からは「預託金の返還期を迎えておらず、被害を実感できない」という意見も出た。経営者を詐欺罪で告訴する意思を示す人もいた。
 元会員は1990年代以降、80万円か180万円の預託金を20万円の入会金とともに支払って入会。5、10年間の預託期間満了に伴って預託金全額が一括返還される会員規約に反し、退会後も一部しか返されていない。

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