【ネットジャーナリズムの行方】
「市民の市民による市民のためのメディア」を標榜(ひょうぼう)してきたニュースサイト「JANJAN」が今年3月、休刊を発表した。
一般ユーザーからなる「市民記者」8千人が、マスメディアではカバーしきれない地域に根ざした報道を実践。総選挙のあった昨年度上半期には、アクセスが1億2千万件にのぼるなど好評だった。7年間にわたり5万本の記事を掲載してきたが、いったん幕引きとなった。
原因は、広告費の落ち込みだ。主な収入源だった親会社の富士ソフト(横浜市)からの広告費が、不況の影響で昨年度は1億円にまで減少した。最高で年間3億円にのぼった運営費の3分の1だ。それも今年度からゼロになることが確定し、休刊を決断した。
「もともとビジネスというよりも、公共的意味を求めて立ち上げた。親会社にはCSR(企業の社会貢献)的に広告費を出してもらっていた」と語るのは、運営する日本インターネット新聞社(東京都千代田区)の竹内謙代表。記事の質を保つには「事実関係や著作権に問題がないかなど、記事をチェックする必要があり、どうしても編集に人件費がかかる」
◆ツイッター台頭
「市民記者」によるニュースサイトは米国などで発展、日本でも2000年代半ばに多く立ち上がったが、JANJAN同様に経営的な理由などで停止するサイトが続出した。昨年には、「オーマイライフ」(旧オーマイニュース)や「ツカサネット新聞」が閉鎖や休止に追い込まれた。
その背景には、ミニブログ「ツイッター」や動画中継サイト「ユーストリーム」など、新しい情報発信サービスの台頭もある。
「善しあしはともかく、事件現場から携帯で写真や動画を撮って公開したり、中継したりできる。記者やジャーナリストを名乗らなくても、個人で情報発信できる時代に、集団で市民ジャーナリズムを実践するには、他にはない戦略が必要」と指摘するのは、メディア研究者、歌田明弘さん。竹内代表も「サイトシステムは技術的に少々時代遅れになりました」と休刊理由のひとつに挙げた。
◆JANJAN再生
JANJAN休刊が発表された後、継続を求める声が寄せられた。
ファンの要望に応えようと、日本インターネット新聞社では5月、市民記者によるブログ形式のサイト「JanJanBlog」としてリニューアル。編集作業をボランティアに任せるなど経費節減を図った。
また、かつてJANJANが立ち上げた政治情報サイト「ザ・選挙」は研究者らが中心となり、更新を続けることになった。
選挙の立候補者の動画を掲載していたサイト「e国政」も今月から動画サイト「ニコニコ動画」の協力を得て、早稲田大学マニフェスト研究所などが7月の参院選に向けて作業を続けている。
リニューアルについて竹内代表は「市民メディアを自分たちの力で継続したいという気持ちを大事に、できるところまでやってみたい」と語った。
既存のマスメデイアにはない新しい形のジャーナリズムを目指し、いくつものニュースサイトが開設されている。一般ユーザーが記事を投稿するサイトや、ネット内でのニュースに特化したサイトなど試みはさまざま。ネット発ジャーナリズムの最前線を追った。