給付金待てず「店諦めた」 コロナ禍、熊本市中心街で経営者苦悩

熊本市の中心繁華街で、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて営業を断念する店舗が出始めている。国や県は、事業継続に向けた給付金や支援金で下支えを目指すとしたが、給付は追いついていない。県内が国の緊急事態宣言の対象から外れたのとは裏腹に、経営者の苦悩は深い。

 「店を続けるのも閉めるのも苦しい。先が見通せず、家賃の支払いもあって早く決断せざるを得なかった」

 同市中央区の下通アーケード街から入ったプールスコート通り。その一角でダイニングバーを営んでいた市橋寛之さん(24)は、断腸の思いで看板を下ろすことを決めた。

 4月上旬からオムライスなどの宅配中心に切り替えたが、月100万円ほどあった売り上げは10万円足らずに激減。月18万円の家賃が重くのしかかった。閉店しても契約上、7月までは家賃を納め続けなければならないという。

 近くの西銀座通りで別にバーを営んでいるが、「料理の腕を振るいたい」と昨年10月に開いたばかりの2店目だった。西銀座通りのバーは15日から再開したが、この週末の来客はゼロ。国の給付金も申請しているが、給付はまだだ。

 一時休業していた下通アーケード街の「猫カフェ」も16日にホームページで閉店を発表した。店はシャッターが下り、「臨時休業」の張り紙のまま。熊本市中央区の会社員、遠山裕子さん(33)は「お店の猫たちはとても人懐っこくてかわいくて。店内も過ごしやすい雰囲気で好きだったのに…」と肩を落とした。

 上通町にあった全国チェーンのドラッグストアも4月19日で閉店した。中国や台湾からの団体客が押し寄せていたが、売り上げは半分以下に落ち込んでいたという。

 同市中心部で100件近くの店舗物件を仲介・管理する不動産会社によると、4月末時点で10件ほどの解約が発生したという。飲食店のほか、美容室や衣料品店など業種はさまざま。「投資額が比較的少ないスナックやバーなどは、さらに営業を断念しやすいのではないか」とみる。

 こうした動きに、熊本市は5月6日までの休業要請期間中に休業や時短営業で協力した飲食店などに、家賃の一部を補助する独自制度を設けた。国や県も、持続化給付金や事業継続支援金の活用を促すが、国の給付金は申請が殺到し、県の支援金の申請受け付けはまだ始まっていない。国の相談ダイヤルは、17日もつながりにくい状態が続いた。(堀江利雅、田中慎太朗、太路秀紀)

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