綿花の価格が高騰している。ニューヨーク先物市場の2010年12月限月契約で1ポンドあたり105セントと、1ドルを超えて推移している。10年7月中旬以降で30セント近く、年初からは約2倍の上昇。1995年5月以来、15年5カ月ぶりの水準となった。
綿花を100%輸入に頼る日本では、紡績業者やアパレルメーカーが大きな打撃を被りそう。衣料品などはデフレの影響で、原料価格の上昇を商品価格に転嫁できないためだ。
洪水、輸出制限、投機筋… 悪材料が重なる
日本綿花協会は、「いまの綿花市場の高騰には、世界的な供給懸念があります」という。2010~11年度の世界生産予測量が1億1700万俵から1億1670万俵に、27万3000俵が下方修正された半面、世界消費予測は1億2020万俵から1億2080万俵と23万9000俵が上方修正された(米国商務省10月レポート)。
それにより、世界の在庫率は37.7%から37%に下がった。この水準は1993~94年度以来の最低水準という。
なかでも深刻な供給懸念が生じるのが中国。中国は天候不順などの原因で、国内で10年~11年度に1850俵の記録的な生産不足が生じるとみている。そこで、輸入量を1280万俵から1300万俵に、25万俵を上方修正した。
高値になっても、買い付けの「主役」は中国。「リーマンショック以降、綿花は生産を減らしました。天候不順も原因でしょうが、一方で中国などの旺盛な需要に追いつかなくなったというのが現状でしょう」と、日本綿花協会はみている。
これに加えて、綿花の供給状況を複雑にしているのがインドの貿易制限だ。インドは世界第2位の綿花輸出国だが、最近になって輸出再開日を10 月1日から11月1日に延期した。こうした事情にパキスタンの洪水被害でさらに供給が逼迫したため、NY先物市場にヘッジファンドなどの投機マネーが流れ込んだ。それらが高値を呼んでいる原因だ。
豪州やアルゼンチンは輸出量を上方修正しているが、いま以上に供給が滞ると「綿花相場の上昇はまだ続くでしょう」(日本綿花協会)とみている。
「デフレ時代、価格転嫁はできない」
日本の綿花は100%輸入に頼っている。その多くは米国とブラジル、豪州からで、2009年には40万俵(約8万7000トン)を輸入している。
最近の高値で国内の紡績業者やアパレルメーカーへの影響が心配されているが、「このままでは、かなり厳しい状況に追い込まれる」(日本綿花協会)という。現在、紡績業者らはまだ様子見の状況だが、一部では「買い控え」もあるという。当面は在庫でしのいでいく「作戦」だ。
ただ、それも3か月程度が限度。日本綿花協会によると、「ひと昔前であれば、最低3か月は在庫を保有していました。そのため、すぐに価格上昇による品不足という事態はありませんでしたが、最近は持っていても1か月くらいですから」と話す。在庫がないと高値でも買わなければならないが、高値の影響が本格的に出てくるのは年明けくらいとみている。
一方、あるアパレルメーカーは、「衣料は低価格が勝負の時代です。原材料の高騰分を商品価格に上乗せできないので、結果的に身を削ることになりかねません」と、頭を抱える。