総務省は、携帯電話のSIMロック解除に関するガイドラインを策定し、公表した。今後は、運用状況をふまえ必要に応じて見直しなどが行われる。5 月26日に公表された案がそのまま正式にガイドラインとして策定されたほか、意見募集の結果に対する総務省の考え方も明らかにされている。
SIMロックの解除に関するガイドラインは、5月26日に案が公表され、6月23日まで意見募集が行われた。意見募集をふまえて策定された正式なガイドラインは、案を踏襲する形となっており、ガイドラインの趣旨として、「事業者(キャリア)による主体的な取り組みにより、解除可能な端末からSIMロック解除を実施することが期待される」としている。
対象となる端末は、2011年度以降に新たに発売される端末で、対応可能なものからSIMロック解除を実施する。キャリアは、SIMロック解除が可能な端末や方法、条件、必要なら手数料の金額などを明示する。説明責任として、キャリアはSIMロック解除の利点と不便になる点をしっかりと説明する必要があり、販売店においてもユーザーへの説明が求められている。また、通信サービスの不具合、および端末の故障については、通信サービスを提供しているキャリアと端末を販売したキャリアで取次ぎ方法などの協議を進めるものとしている。
ガイドラインの案を公表した後の意見募集では、法人・団体から13件、個人から34件の意見が提出された。
総論の区分で提出された中で、ソフトバンクモバイルは、「ビジネスモデルの在り方について、原則、市場の競争に委ね、サービスの多様化や進化を促すことを基本とすべきであり、行政が過度なルールを課すことは望ましくない」との意見を表明し、「事業者によって周波数、通信方式等に差異が存在している現状においては、携帯電話のSIMロックを解除したとしても、当該端末により、他事業者の電気通信サービスの一部もしくは全てが利用できないため、効果が限定的」と指摘。「事業者間の公正競争環境を整備することが不可欠であり、第一に、周波数割当ての適正化、ローミングやネットワークシェアリングにかかるルール整備及びメール転送サービスの実現等の各種施策について、行政を中心に推進すべき」と提案している。
イーアクセスとイー・モバイルは、「どのような検討もしくは議論を経てガイドライン案の内容になったのか、策定におけるプロセスが明らかになっていない」と策定プロセスの透明化を求め、「内容については、対象となる端末など事業者の裁量に任されている範囲が広い場合には、事業者の都合に合せた区々の対応となり、利用者にとっては分かり難いばかりでなく、SIMロック解除端末を選択する利用者の需要行動にマイナスの影響を与える可能性もある」と指摘し、「公正競争上の問題が発生するようであれば、速やかに法制化による担保に移行すべき」との考えを明らかにしている。
NTTドコモは、ユーザーへのサービス説明や故障対応について、「事業者が統一的なルールの下で協力して当たることが必要」としており、「公正競争条件確保の観点から、携帯事業者4社が歩調を合わせるべきであり、とりわけ対象端末について事業者の裁量を極力排除する取組が必須」と指摘。「対象端末を『対応可能なものから』とするなど事業者の裁量が大きく、事業者により取組レベルに差異が出てくることが懸念される」と想定する問題点を挙げるとともに、「総務省によるチェック機能の強化や是正措置の勧告といった実効性を担保する施策についても明確化される必要がある」とした。
KDDIは、「SIMロック解除端末が販売された場合の事業者間の責任分担や故障対応等、ユーザー保護・利便性向上のための運用上の課題等について整理し、ガイドラインには専らこれを記載すべき」とガイドラインの改定について触れている。