縁づくりの酒「甦る」 いわきの避難者と浪江の蔵元がタッグ

 福島第1原発事故で福島県いわき市から山形県長井市に移住した元塾講師村田孝さん(47)らが中心となって生産したコメを使い、福島県浪江町から長井市に拠点を移した鈴木酒造店が銘柄「甦る(よみがえる)」の日本酒造りを進めている。来年2月上旬に長井市内で試飲会をした後、販売する予定だ。
 希少種の食用米「さわのはな」を約1200キロ使い、純米吟醸酒を一升瓶で700本分醸造する。仕込みは11月中旬に始まった。一部の作業には村田さんら避難者ら9人も参加し、もろみを貯蔵したタンクに蒸し米を投入したり、櫂(かい)入れという作業で発酵を促したりした。
 「甦る」はもともと長井市の別のコメ生産者と酒蔵が地域活性化のために造っていたが、昨春に後継者難で酒蔵が廃業し、途絶えていた。
 村田さんが昨夏、地元住民との懇親会で「甦る」を飲んだ際、酒蔵施設を引き継いで再起した鈴木酒造店との共同計画を発案した。鈴木酒造店の快諾を得た3月下旬以降、村田さんが世話になっている市内のNPO「レインボープラン市民農場」の避難者交流事業として進めてきた。
 場所は山形県だが、酒米作りと酒醸造の双方に福島の人が関わる。村田さんは「復興への願いも込められるこれ以上ない名前。春の田植え、秋の収穫には多くの避難者の助けも得た。みんなの思いが詰まった酒になるだろう」と試飲会を心待ちにする。
 さわのはなは食用の割に粘度が低く、酒造りに向くとされる。地元の軟水が味の特長を引き立てそうだ。
 鈴木酒造店の杜氏(とうじ)で専務の鈴木大介さん(39)は「コメの味わいが全体的に出そうなイメージを持っている。福島と長井の人を結ぶ縁づくりの酒になってほしい」と期待する。

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