世界文化遺産の大湯環状列石(秋田県鹿角市)の代表的な出土品で、粘土板の表面に付けた穴で人間の体を表現している「土版(どばん)」の内部に、消化管に似た貫通孔があることが、レプリカの制作過程で分かった。土版を展示している大湯ストーンサークル館の担当者は「縄文人が体内の構造を理解していたのではないか」と推測する。
土版は1985年度に出土した長方形の粘土板(縦5・8センチ、横3・7センチ、厚さ1・5センチ)。表と裏には目や口などを表す穴があり、その数は口が1、目が2、右胸が3、左胸が4などとなっている。6までの数で人体を表現しており、縄文人の数に対する認識をうかがわせる珍しい出土品だ。
史料としての価値に加え、ゆるキャラのような表情から「どばんくん」の愛称で知られる。各地の博物館から展示の依頼があったが、文化財保護の観点から貸し出しは断っていた。
鹿角市教委は2020年1月、土版のレプリカ制作を秋田県産業技術センター(秋田市)に依頼。精緻に測定するために実施したCTスキャンの結果、口の穴と底部の穴が空洞化した内部でつながっていたことが判明した。空洞には別の年代の土が入り込んでいたため、これまでは目視で貫通していることを確認できなかった。 20日にストーンサークル館であったレプリカの完成会見で、同館の赤坂朋美主任は「貫通孔は口と底部の穴から細い棒でつついて、それぞれ中央に向かって開けられていた。縄文人が数に加えて人体構造も認識していた可能性があり、学術的に価値のある発見になった」と述べた。
レプリカは6個制作し、うち2個は英国の世界遺産「ストーンヘンジ」の観光施設と秋田市の県立博物館に貸し出された。実物は今後もストーンサークル館で展示する。