チョークといえば学校ではおなじみのものだ。お世話になったことがない人はまずいないだろう。
先生に指名されて黒板に答えを書いたり、当番で黒板消しのチョークの粉をはたいたり。マンガやドラマなどでは寝ている生徒に先生が投げるシーンでも必須のアイテムだ。
そんななじみ深いチョークが、先日から話題になっている。
それがチョークの老舗、羽衣文具が廃業するというニュースだ。
●学校の必需品なのに、なんで廃業に?
チョークは、学校がある限り、無くなることがないと、思っていた。
しかし、実は違っていたのだ。
少子化で子どもが減っていることに加え、なんと電子黒板の普及がチョークの需要を下げているというのだ。
まだすべての学校で電子黒板が利用されているという状態ではないものの、これから確実に増えていくのは目に見えている。そうすると、どんどんチョークの出番はなくなってしまうわけだ。
加えて羽衣文具では後継者が不在という問題もあるのだそうだ。社長も体調不良ということで、やむなく廃業を決意したのだそうだ。
●品質を証明する「爆買い」で話題に 惜しまれる羽衣チョーク
老舗企業の廃業。こうした例は、残念ながら珍しいことではない。
それなのに、なぜ羽衣文具の廃業が話題になっているのか。それは廃業が発表されるやいなや、羽衣チョークが「爆買い」されたからだ。
チョークを爆買いするなんて、「誰が?」 「なんで?」と不思議に思うのも当たり前だ。別にチョークは羽衣チョークだけが生産しているわけではない。
まだチョーク自体が手に入らなくなったり、なくなったりするわけじゃない。だから、そんなに焦ることもないはずだ。
しかし、実はこの羽衣チョーク。ものすごいスグレモノだったのである。
羽衣チョークは、とにかく書き味が良い。粉が出にくく、そして折れにくいという。
チョークを常に使っている教師や塾の講師にとって、羽衣チョークはほかの製品には代えがたい品質のチョークなのだそうだ。
チョークにいろいろな製品があるなんてことを考えたこともなかった筆者にとって、これは目からウロコの事実だった。
●アメリカの数学者達にも愛用されている羽衣チョーク
羽衣チョークが生産終了するというニュースは、世界にも広がり、世界中から注文が殺到したのだ。
爆買いしているのは予備校と、なんとアメリカの数学者たちだという。200人で1トンものチョークを購入したとか。
映画とかでは、よく数学者が黒板いっぱいに数式を書いている場面を見る。
まさにその通りで、数学者は、あの大きな黒板にびっしり数式を書いていくことで、頭を整理し、考えを進めていくのだそうだ。
チョークが黒板に引っかかったり、ポキポキ折れてしまったりすると、そのたびに思考が中断されてしまう。そうならないために必要なのが「羽衣チョーク」なのだ。
この話を子どもにしたところ、「そういえば、先生が『羽衣チョークはないの?』と探してたよ」とのこと。
そんなにスゴイのか、Made in Japanの「羽衣チョーク」。
世界各国で使われているチョーク。数あるチョークの中でも、ぜひ使いたい、これでなきゃダメと思われているものがMade in Japanだっだとは。なんだかここまで日本製品が絶賛されると、誇らしいやら、ちょっと使ってみたくもなるやらする。
そんな世界ブランドとも言える製品を生み出した会社がなくなってしまうのは、なんとも残念だ。