千葉に残る羽衣伝承の正体はオーロラ-。科学者と文学者が協力して更級日記から千葉市の成り立ちを探ると、意外なストーリーが浮かび上がった。平安時代に地球の磁気がどう流れていたかを示す痕跡を見つけたのがきっかけだ。市原市の養老渓谷にも同様の痕跡がある。関係者は、千葉を地球活動の遺産がある「ジオパーク」とするためユネスコ(国連教育科学文化機関)に働きかけていく。
理学博士の楡井久・茨城大名誉教授や、NPO法人の「観光立県支援フォーラム」、文学博士で千葉大非常勤講師の丸井敬司さんらが協力して調査、研究を進めている。12月には千葉市民会館で調査の集大成を報告する会を開く。
ジオパークとは、貴重な地層や地形を教育、観光振興、地域経済の活性化などに生かす仕組みを整えた地域で、ユネスコなどが整備を支援している。
更級日記は、平安時代の菅原孝標女(たかすえのむすめ)による回想記。菅原孝標女が旅の途中で宿泊した「池田」という土地の大きな池は、千葉市中央区本町あたりにあったことが、平成21年に実施した地質調査などで判明した。
さらに地層の分析を進めると地球上の磁気の流れが、現在と違っていたことも分かった。平安時代は千葉でもオーロラが見えた可能性が高く、「菅原孝標女も池田(千葉)で見たかもしれない」(丸井さん)。
オーロラ出現は、天女が松の木に羽衣をかけたという市内に残る伝承と符合する。現場は県庁わきの羽衣公園だ。
磁気の変動の痕跡は千葉市内では地中に眠るが、市原市の養老渓谷では地表に露出した場所がある。こうしたポイントは極めて珍しく、ほかにイタリアに1カ所あるだけだという。世界にアピールできる観光資源になりうる。
ジオパークとするためには、調査活動などを続けていることをユネスコにアピールする必要があるといい、丸井さんたちは報告書を提出する考えだ。また12月3日に、千葉市民会館で「ちば歴史フォーラム オーロラの出現と千葉町の出現」を開く。午後1時半から。入場無料。