中国発の新型コロナウイルスの「パンデミック(世界的大流行)」を受けて、自由主義諸国が“中国包囲網”を敷き始めた。共産党独裁の習近平政権が「死のウイルス」の発生を当初隠蔽したうえ、「米軍が持ち込んだ可能性」などと情報操作を始めたからだ。米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計では、全世界の累計感染者数は30万人を超え、死者も1万3000人を突破した(22日時点)。世界経済の被害も甚大だ。欧米のメディアや科学者らは明確な「中国批判」を展開しており、米国の法律家グループは中国政府などへの集団賠償請求訴訟を起こした。中国情勢に精通するノンフィクション作家、河添恵子氏による、独走の緊急寄稿第7弾-。
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「中国共産党が(新型コロナウイルス)の流行を隠蔽したことで、パンデミックという結果をもたらした。さもなければ、パンデミックは完全に避けることができたはずだ」
全米最大のニュース放送局「FOXニュース」の政治トークショー「タッカー・カールソン・トゥナイト」のキャスター、タッカー・カールソン氏は18日夜の番組で、こう中国共産党を批判した。
ドナルド・トランプ大統領が同日の記者会見で、「Chinese Virus(中国ウイルス)」と連発し、中国共産党の隠蔽と情報操作を攻撃したことを受けたものだ。
同局では、カールソン氏以外にも、複数のキャスターが番組をリレーするように、次のように中国共産党を非難した。
ニュース番組「ハニティー」で、キャスターのショーン・ハニティー氏は「中国共産党による一連のウソが世界中の人々を苦しめ、命を落とすことになった」「彼ら(中国共産党)は今、世界中で死、破壊、殺害を引き起こしている」と言い切った。
女性キャスターのローラ・イングラハム氏は「われわれ(米国)は中国政府に対して、より厳しい措置を検討する必要がある」と語った。
キャスターらは、中国が新型コロナウイルスの発生国であることを非難しているわけではない。中国共産党による隠蔽工作や責任転嫁のプロパガンダ(宣伝工作)を問題視しているのだ。
感染拡大が止まらない欧州のメディアも中国批判を始めた。
フランスの日刊紙ルフィガロは17日、「台湾の民主的な統治モデルは防疫に成功した。中国の中央集権的な防疫モデルへの挑戦だ」と、感染拡大を食い止めている台湾を称賛し、独裁体制の中国を非難する記事を掲載した。
科学者も「反中共」の声を上げている。
米国と英国、中国の7人の研究者が、米国の科学誌「サイエンス」で16日、「記録されていない感染者が、新型コロナウイルスの急速な伝播を促進する」というタイトルの論文を発表した。
同論文は「1月23日に武漢市が封鎖されたが、その管理措置がとられる以前、感染者の8割以上が記録されていなかった。その後の大部分の感染は、この部分的集団から拡散し、その後、急速に蔓延(まんえん)したことが制御不能になった主因」と結論づけた。
つまり、中国当局による初期段階でのアウトブレーク(集団感染)に関する隠蔽をパンデミックの原因と断定している。
米国の法律家グループも立ち上がった。
マイアミ(フロリダ州)のバーマン法律グループは13日、中国と湖北省、武漢市、および複数の中国政府機関が、新型コロナウイルス発生の初期段階の処理を誤ったとして、人身傷害や不当な死亡、財産の損害、その他の損害を受けた人々に、数十億ドルの損害賠償を支払うように求める連邦集団訴訟を起こした。今後、中国共産党幹部らが、米国の裁判所で“糾弾”される可能性もある。
さて、「未知のウイルス」の流行にいち早く警鐘を鳴らした、武漢市中心医院の眼科医、李文亮氏の死(2月7日)から1カ月半を経て、中国当局は調査結果を公表した。
SNSには「家族への謝罪以外は責任逃れだ!」などとの怒りが散見するが、驚くべきは、李氏の上司にあたる眼科副主任2人を含む4人の同病院の医師と倫理委員会メンバー1人の計5人が、先月7日から今月20日までに新型肺炎(COVID19)で死亡していたことである。
NGO「公民力量」(本拠地・ワシントンDC)は、「李文亮事件」の責任者11人の名前を発表した。武漢市衛健委書記、武漢市公安局長、宣伝部部長らのほか、チャイナセブンの一人、王滬寧・党政治局常務委員(序列5位)の名前も入っていた。
■台湾外相、中国の暴発危機に警鐘
世界のあらゆる分野が、着実かつ急速に「中国包囲網」を構築している。
習政権が公表する感染者数や死者数に疑問があるうえ、責任転嫁のためにウイルスの“脱中国化宣伝”を進めていることに我慢ならないようだ。反中国共産党の識者らは「中国ウイルス、中共ウイルスと呼ぼう」と世界に呼びかけている。
こうしたなか、実に気になる発信があった。
台湾の呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(外相)は16日、米国の弁護士で学者であるヒュー・ヒューイット氏が司会を務めるラジオ番組のインタビューに応じ、追い詰められた中国が暴発する危険性を以下のように指摘した。
「台湾は中国共産党に脅かされている。中国経済は新型コロナウイルスの流行前から減速していたが、さらに大勢が失業し、習国家主席への内部不満が高まっている」「こうした場合、最も簡単な方法は『外にスケープゴートを見つけ、戦争を仕掛けたり、危機を作り出したりすること』だ。台湾はおそらく、中国にとって便利なスケープゴートだ」
日本のメディアは、中国の危険性や、世界の新たな潮流を理解しているのか。決して、タブー視してはならない。
■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。