習近平が街頭やネットから消えた!異常事態の裏で増し始めた“中国ナンバー2”の存在感 

「現地メディアでは、当然報道されません。でも、街から“習近平”が消されているんです。異様ですよ…」

 そう声を潜めて語るのは、中国在住のジャーナリストだ。

 現地の国営メディアは、秋に開催される党大会に向け、精力的に“プロパガンダ”にいそしんでいる。

「習近平国家主席は、中国のトップとして異例の3期めを狙っています。当局の意を酌むメディアは、習近平礼賛のオンパレード。たとえば、上海の封鎖解除など無数に重大なニュースがあるはずなのに、6月2日の『天津日報』のいちばん大きな見出しは『習近平、ブラジル大統領にお見舞いのメッセージ』ですよ」(現地在住ライター・もがき三太郎氏)

 しかし、冒頭のジャーナリストは、街頭からこっそり習近平氏が消えており、その写真がSNSで出回っているという。たとえば、天津市には「緊密団結在以習近平同志為核心的党中央周囲」と書かれた看板があった。

「その意味は『習近平同志を核心とする党中央委員会の元に、緊密に団結をしよう』というもの。街角に溢れる典型的な習近平崇拝メッセージですが、この看板が一夜にして取り外されたというのです」

 また、とあるイベント自体が“なかったことにされる”という事態も発生している。中国事情に詳しいジャーナリストの角脇久志氏が語る。

「4月23日、広西チワン族自治区で『習近平思想本の読書大会』が開かれました。これは習近平の思想が書かれた本を約900万人に配り、会社や学校、地域コミュニティで読書会をおこなうというものです。自治区のホームページや現地メディアには、イベントの様子を伝える記事が多く掲載されていました」

 ところが5月上旬、この一連の記事が、突如消えてしまったのだ。

「自治区のホームページで私も検索しましたが、ほかの過去のイベントは表示されるのに、この読書大会だけはヒット数がゼロ。900万人が参加したイベントが、なかったことにされるのは異常ですよ」

“習近平の消失”に呼応するかのように、別の不気味な現象が起きている。中国のナンバー2・李克強首相の名が登場し始めたのだ。

「『把民之所望、做改革所向』(人民の願いを受け止め、改革へ向かう)という言葉が巨大な赤い文字で、貴州省遵義市の政府のホールに掲げられました。落款は李克強。彼が’13年に初めて首相に就任した際に発した言葉です。通常、このような場所に掲げられる“偉人の言葉”は習氏のもの。異常事態です」(現地記者)

 さらに、李氏による習氏への“反逆”と、とらえられかねない事態も起きている。

「5月下旬、李氏が雲南省の大学を訪問しました。そこでは李氏はもちろん、同行スタッフ、学生たちもすべてノーマスクだったんです。これは、ゼロコロナ政策を進める習氏への無言の抗議と考えられます。大学が発表した写真がSNSに出回り、話題になると即削除されました」(同前)

 李氏は、現実主義で経済通。何もかも、習氏と真逆だ。

「習氏は、政府のコントロールからなにかと外れようとする超巨大IT企業のアリババ・グループやテンセントを平気で締めつけるし、格差拡大を防ぐために、10兆円市場といわれる学習塾を一律で禁止するなど、経済的な痛手を気にせず政策を実行します。その象徴が、上海のロックダウンを含めたゼロコロナ政策でしょう。全国の大都市で毎日のように市民におこなわれるPCR検査など、政策を継続するには莫大な費用がかかります。これを1年間続けた場合、1.7兆元(約33兆円)かかるともいわれています」(角脇氏)

 これに待ったをかけているのが、現実派の李氏だ。

「結局、6月から上海は“解放”され、当局は“脱・ゼロコロナ政策”に転換しました。これを主導したのは李氏なんです。そしてこの決断を多くの人民が喜んでいます。習氏がミソをつけたのは間違いありません」(同前)

 党大会で、党総書記という肩書からさらにランクアップし、毛沢東も務めた「党主席」就任を狙っているとも報じられた習氏。習氏による“文化大革命”が起きないといいが…。

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