老朽マンションの建て替え促進策導入へ…階数増やせる特例で「新陳代謝」進める

国土交通省は、古くなったマンションの建て替え促進策を導入する。建物の階数を増やせる特例を受けやすくし、管理組合が増床分を販売できるようにすることで、住民の合意を促したい考えだ。老朽マンションの増加に歯止めをかける狙いがあり、関係する省令・告示を年内に改正する。 【動画】高齢者の転倒事故はこうして起きる

 マンションの建て替えに際し、階数を増やせるのは、1981年以前の旧耐震基準で建設された「耐震不足」の物件に限られている。国交省は省令・告示の改正により、「外壁の劣化」「防火体制の不足」「配管設備の劣化」「バリアフリー未対応」の4要件を新たに加え、いずれか一つに該当すれば容積率を緩和する特例を受けられるようにする。

 各要件のうち、「外壁の劣化」は、ひび割れやはがれが一定以上あることを、「防火体制の不足」は、非常用進入口の未設置などを指す。

 「配管設備の劣化」は天井裏の排水管で2か所以上の漏水、「バリアフリー未対応」は3階建て以上の物件でエレベーターがないほか、各戸玄関の幅が75センチ未満などが該当する。

 これらはいずれも、建物の規模に応じ、1級建築士などの有資格者が調査、判断する。

 特例が適用されるメリットは大きい。どれだけ増床できるかはマンションの立地によるが、国交省によると、過去の実績ベースでは2~3割程度が認められてきた。10階建ての老朽マンションを、12、13階建てに建て替えることができるイメージだ。

 増えた分は、マンションの管理組合が不動産会社などに売却し、建て替え資金に充てることが想定されている。国交省は、手元資金が十分ではない管理組合でも、建て替えを決断しやすくなると見込む。住民は引き続き、建て替え後のマンションに住んだり、他人に貸したりできる。

 マンションの建て替えには、所有者の8割の合意が必要になる。費用負担がネックとなって合意に達することができず、老朽化が進むケースは全国で後を絶たない。放置されたままでは、壁面の崩落や廃虚化に伴う事故、治安悪化を招くといった事態が懸念される。国交省は新たな施策により「マンションの新陳代謝」(幹部)を進めたい考えだ。

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