インターネット宿泊予約サイト「じゃらんnet(ネット)」を運営するリクルートに旅館業界が猛反発している。利用者へのポイントサービス強化に伴い、宿泊施設側に販売手数料の引き上げなどを求めているためだ。利用者にはうれしいサービス強化でも、その原資を旅館側が負担する内容のため、老舗旅館のダンナ衆の怒りは収まらない。
リクルートでは10月末、じゃらんnetのポイント(1ポイント=1円)を来年4月以降、グループ内の飲食総合情報サイトなどと共通化することを発表。飲食店予約など他サービスで付与されるポイントも、じゃらんnetの旅行商品に使えるようにする。
ただ、同時に宿泊施設側に通告した販売手数料率の変更が波紋を呼んだ。新制度で利用者に付与するポイントは旅行代金の2%。リクルートではこの2%分を販売手数料に上乗せし、宿泊施設に課す方針を打ち出したのだ。
例えば、2人以上1室利用では現行の8%が10%に、シングルではシステム利用料率自体の引き上げと合わせ4%から8%に倍増。宿泊施設側が3万円のシングルプランをじゃらんネットを通じて販売した場合、リクルートに支払う手数料は従来の1200円から2400円となる。
じゃらんと並ぶ大手、楽天トラベルをみても利用者へのポイント還元は1%。一気に2%も上昇し、それを宿泊施設側に課す内容だったから旅館業界もたまらない。
日本有数の温泉地、箱根の箱根温泉旅館協同組合(神奈川)では激しく反発。リクルート側と協議した同組合の老舗高級旅館「和心亭豊月」の杉山慎吾さんはこう語る。
「楽天トラベルと同列の1%負担なら議論の余地はありますが、2%は納得できない。(利用者の囲い込みを目的とした)楽天を上回るポイントサービスの原資をなぜわれわれが負担しなくてはならないのか」
新制度が導入されると「和心亭豊月」の年間負担増は30-40万円に達する見通しで「貴重な収益をじゃらんnetの営業経費に転嫁される」(杉山さん)と憤る。
長引くデフレ不況で、旅館の経営も厳しく、厚生労働省の調べでは、09年度の旅館軒数は前年度比1879軒減の4万8967軒で、5万軒の大台を割り込んだ。
箱根に限らず、国際観光旅館連盟近畿支部、同九州支部の各施設でも再検討や適用猶予期間を申し立てている。
リクルートでは「様々なご意見をいただいておりますが、ご理解頂くよう、誠意を持って真摯に話し合いを続けていく」(広報)と話す。だが、説得を続けても同意しない施設は、契約解除も辞さない構え。騒動は広がるばかりだ。