職場の苦手な人が嫌でなくなる”スゴい思考法”

PRESIDENT WOMAN 掲載 職場に「どうしても苦手な人」や「嫌な人」がいる。でもすぐに逃げる方法が見つからないという場合、どうすれば少しでもラクになるでしょうか。産業医の井上智介さんが、カウンセリングの現場で提案し効果をあげている方法を紹介します。

※本稿は井上智介『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)の一部を再編集したものです。

■他人を変えるのはやめる

誰しも、できるなら自分とウマの合う人とだけ一緒に過ごしていたいものです。

しかしながら、社会に出ると、そのようなことばかり言っていられず、嫌いな人と一緒の時間を過ごすことも必要になってきます。

相手の嫌なところを変えようとして色々と画策すると、かなりのエネルギーと時間を費やすことになります。

その結果、何も変わらないことなんてザラです。だからこそ、他人を変えようとするのは、絶対にやめておきましょう。

ここまで何度もお話ししてきましたが、あなた自身のためには他人を変えるのではなく、自分の考えを変えたほうがよいのです。

認知を変えることで、少しでも自分の居心地がよくなるように工夫してみましょう。

しかしながら、嫌いのレベルも人それぞれであって、「何となく嫌だ」というレベルから「これ以上一緒にいたら精神的に耐えられない」レベルまであります。

また、自分自身の認知を変えるのも、時間がかかります。その時間をかけて待てるならいいのですが、現実ではそれでは間に合わないこともあります。

■終わりがあるから頑張れる

精神科医として思うのは、自分を犠牲にしてまで付き合うべき人や仕事は、この世の中には1つもないということ。

すでにお話ししたように、物理的な距離が取れればいいのですが、実際の会社では難しいことも多いでしょう。

そのような時にぜひ取り入れていただきたいのが、「期間限定の思考」です。

どんなにつらいことであっても、終わりが見えているのとそうでないのとでは、心の持ちようは全く違ってきます。

産業医として、長時間残業をしている人と面談することが多々あるのですが、その中にも、「今月は大変でしたが、来月の中旬には業務が一段落するのがわかっているので頑張れます」とおっしゃる人がたくさんいます。

その一方で、「負担がすごいし、仕事がいつ終わるかわからなくて……。毎日、仕事のことで頭がいっぱいで、夜も眠れなくなってきています」と話す人も。

終わりがわかっているかそうでないかによって、プレッシャーの感じ方はこれほど、違ってくるのです。

これは人間関係にも応用できます。

■期間が過ぎたらどうなるのか

このようなやり取りは、決して稀(まれ)なものではありません。産業医ならば、1年に何度も繰り返しているはずです。それほど、人間関係で悩んでいる人が多く、人間関係で人生が変わるような思いをすることも多いのです。

では、このような、「期間限定」の付き合いを実践した人は、この後どのようになるでしょうか。実は、ほとんどの人が転職に至りません。

もちろん、転職がうまくいかずに、今の会社にやむなく残る人もいるでしょう。しかし、私が知っている限りは、そのような「転職したいのにできない」ケースは多くありません。

どういうことかと言うと、しばらくして再び面談した時のやりとりに、その答えがあります。

●「『どうせ辞める』と思って上司と関わっていると、気が楽になって、意外と懐に飛び込みやすくなりました」
●「何となくですが、上司も私と同じように悩んでいることに気づきました」

期間限定のお付き合いでいいや、と決めた人には、心に余裕が出てくるのです。今までは、相手に対して、嫌な面しか見えていなかったのが、全体を俯瞰することができるようになり、また違った相手の一面を見ることができるのですね。

あなたが現状にしがみついて、心がズタボロになるまで、我慢する必要はありません。そのストレスを自分ではどうしようもないなら、逃げられるうちに逃げましょう。

ただ、今すぐは動けないというのであれば、この期間限定のお付き合いが効果的です。

まずは自分で決めた期間だけでいいので、頑張ってみましょう。<POINT>
しんどい相手からすぐには逃げられないときは、
「期間限定思考」で心の余裕を作ってみよう。

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井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務

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