大地震が発生する前、上空の「電離圏」で異常が生じることがあるのは、地殻内部の破壊で粘土質に含まれる水の特性が変化することが原因との研究成果を、京都大の梅野健教授(通信工学)のチームが発表した。能登半島地震や東日本大震災の発生約1時間前にも異常があったが、メカニズムは不明だった。
電離圏は地表から上空300キロ付近にある電子が広がる層で、大地震直前に約20キロ地表に引き下がることが報告されている。人工衛星の位置測定システムの観測局を増やすことなどで、1~2時間前にマグニチュード(M)7・0以上の大地震について、発生場所や揺れの範囲が予測できる可能性があるという。
これまでの研究で、大地震発生時の震源地の地質調査から、プレート境界にある粘土質の層に水分が含まれることが分かっている。
チームは、本震が起こる前に、破壊の圧力で岩盤が超高温となり、水分が超臨界という電気が流れにくい状態になると仮定した。岩盤が帯電して電圧が一定以上になると放電し、地表の電圧が上昇。大気中の静電気の量も変動して電離圏まで伝わり、地上へと引き寄せられると予測した。
粘土質に水分を混ぜたステンレス容器を準備し、周囲を電気ヒーターで包んだ装置を準備。地震発生の際に岩盤にかかる圧力や温度を再現し、帯電量を測定した。その結果、電離圏を乱す値が観測され、予測が正しいことが証明されたという。
地震と大気中の変化についてはこれまでも官民で研究が行われているが、大地震直前の正確な予測には課題も多い。