マスクの着用が13日から個人の判断に委ねられた。職場や交通機関でのルールも見直され、コロナ禍前の生活を取り戻す大きな一歩となった。ただ、3年にわたってマスク生活が続いてきただけに、国民の間で「脱マスク」が浸透するには時間がかかりそうだ。
マスク着用の協力を求めるポスターを外す全日空の職員ら(12日夜、羽田空港で)=須藤菜々子撮影© 読売新聞
■厚労省
新型コロナウイルス対策を担っている厚生労働省。13日朝、庁舎のある東京・霞が関では、マスクなしで出勤する職員の姿が目立った。人事課では数十人の職員の半数ほどがマスクを外して仕事をしていた。
厚労省では全職員向けのメールの中で、「職員の主体的な選択を尊重し、個人の判断に委ねる」などと通知。政府の目安と同様、混雑した電車やバスに乗る時、医療機関受診時にはマスクの着用を推奨している。
竹林悟史人事課長(53)は「コロナ禍前と同様、マスクを着けるかどうかは個人の自由となり、ポストコロナに向けた記念すべき日だ。周囲の人や上司の顔色を気にせず、マスクの着脱が自由な世の中になってもらいたい」と話した。
■夢の国
来園者に原則マスクの着用を求めてきた東京ディズニーランド(千葉県浦安市)でもこの日から、個人の判断に委ねられたが、大半はマスク姿だった。
13日朝、大阪府から同級生9人で訪れた高校3年の女子生徒(18)はマスクを外して入園待ちの列に向かった。「一緒に来た友だちの表情を見ることができ、よりいっそう楽しめそう」と喜んだ。
大型リゾート施設「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)では、施設全体で推奨していたマスク着用を、巡回バスや船に乗る時に限って勧める対応に切り替えた。
園内では、来場者の多くがマスクを着用しており、着けていない人はまばらだった。東京都八王子市の公務員の女性(38)は「習慣で着けてしまう。周りが外せば外しやすくなるのでは」と話した。
■羽田空港
羽田空港(東京都大田区)では12日夜、空港内に掲示されていたマスク着用を呼びかけるポスターを取り外す作業が行われた。
第2ターミナルでは午後8時過ぎから、全日空の職員が、保安検査場前に設置していた「マスク等をご着用ください」と書かれたポスターを搭乗手続きに関するものに貼り替えた。
全日空では、機内や空港で流していたマスク着用を求める放送を13日から取りやめた。カウンターなどに設置してきた飛沫(ひまつ)防止のパーティションも順次撤去していく。消毒液の設置は継続するという。
マスクについてはこれまで、乗客から「着けたくない」「着けていない人を注意してほしい」など賛否両論の意見が寄せられていたという。
同社CX戦略部の久沢弘太郎部長(55)は「急に多くの方がマスクを外すことはないと思うが、お客様や従業員の考えを尊重し、トラブルがないように対応したい」と述べた。
■口周りスキンケア用品、売れ行き好調
マスク着用の目安緩和が発表された2月以降、口周りを手入れするスキンケア用品や化粧品の売れ行きが好調となっている。マスクを外す準備を進める人が増えているとみられる。
全国に151店舗を構える生活雑貨店「ロフト」では、顔に塗るファンデーションの2月の売り上げが、昨年同月比で2・5倍に上った。リップクリームも同1・5倍になった。
コロナ禍では、マスクを着けていると隠れる口周りのメイクやひげそりを控える人もいた。2月以降は口紅を求める女性が増え、ひげそり用のカミソリや鼻毛を切るハサミを購入する男性が増加しているという。
広報担当の高橋祐衣さん(34)は「マスクで隠れていた顔の肌荒れや、身だしなみを整えるために購入する人が多いようだ。これからは『マスクを外してメイクを楽しみたい』という女性が増えていくのではないか」と話した。