“脱湾岸民”続出!「1億円超の豊洲タワマン」から「あえて8,000万円の埼玉タワマン」へ…世帯年収2,000万円の30代パワーカップルが引っ越した驚愕の理由

タワマン需要が伸び続けている。なかでも、特に高い人気を誇るのが東京・湾岸地区の豊洲、勝どきにあるタワマンだろう。物件価格の相場は当然のように1億円を超えている。世間一般で「勝ち組」と称されるような収入の高い世帯でなければ手が届くものではない。しかし、その実態は物件価格に見合ったものではないと否定する人もいるという……。元住民に話を聞いた。

資産価値は高騰も…「脱湾岸民」が続出

マンション価格の高騰が止まらない。不動産経済研究所によると、2023年度に都内23区で販売された新築マンションの平均価格は1億464万円と過去最高額を記録した。価格上昇を牽引するのは各地で建設されているタワーマンションだ。特に湾岸のマンションは資産価値も高く、投資対象としても人気を集めている。

しかし、ブームの裏で、幸福を求めて湾岸から脱出する人が増えているという。その目的地が埼玉だというのだから、驚きだ――。

タワマンからタワマンへ引っ越し…豊洲より埼玉を選んだ30代パワーカップル

「子供の教育を考えたときに、このまま豊洲に住んでいでいいのかという悩みがありました」

埼玉県川口市。川口駅からほど近いタワマンの一室で、30代後半の男性はこう話す。男性の妻も「子供が小さいころは便利だったけど、嫌な部分も目につくようになって」と同調する。世帯年収は約2,000万円とバリバリのパワーカップルだが、あえて豊洲から川口へと移住した「脱湾岸民」だ。

「周囲からはなんでわざわざ埼玉に?と聞かれましたが」と男性は笑いながら語る。子どもの誕生を機に豊洲のタワマンを購入。第二子も誕生し、何不自由ない生活を送っていたという。

「夫婦共働きなので職場まで近いし、公園を併設している『ららぽーと』もあって、買い物も子供を遊ばせるのも一ヵ所で済むのは本当に助かりました」

新居のリビングに飾ってある家族写真は、豊洲ららぽーとの写真館で撮ったものだそうだ。幸せを絵に描いたような家族だが、子育てを考えたときに、豊洲での生活に息苦しさを覚えるようになったという。

「湾岸はもう人の住む場所ではない」

「子供が大きくなるにつれ、保育園で仲良くなったママ友がみんな『塾、どこに入れる?』ってソワソワするようになって。私も夫も高校まで公立だったので、中学受験が前提という価値観がどうしても合わなくて」と男性の妻は明かす。

高収入のエリートサラリーマンが多く集まる湾岸のタワマンでは、子どもの教育に熱心な家庭が多い。豊洲にはSAPIXや早稲田アカデミー、日能研といった大手の塾が軒を連ね、夕方になると子供たちが吸い込まれていく。

「まだ小さいうちから受験のために競わされて、本当にそれって子どものためになるのかなって。でも、そういうことは口に出せない雰囲気でした。今年はあの塾から開成に何人合格したらしいとか、あそこは最近落ち目だとか、そんな話ばかり」とため息を付く。

現在、大学受験は総合型選抜と推薦入試が主流になりつつあり、いわゆるペーパーテストの一般入試は今後もどんどん減っていくのは確実だ。しかし、豊洲に住むようなエリートは自分が成功したから子どもに自分のようなルートを歩んでほしいと、小学生のうちから勉強を強いて、テストの点数で競わせるという昭和の価値観を引きずっているという。

「小学校も受験最優先という雰囲気で、メンタルを崩す子どももいると聞きました」

「教育」の価値観が異なる湾岸と埼玉

一方、川口市に引っ越して驚いたのが、豊洲とは真逆の価値観だという。

「中学受験をさせる家庭もいますが、割合としては少数派。埼玉県はもともと公立高校の人気が高いので、わざわざ中学受験させる必要がないという雰囲気です。むしろ放課後は塾よりもスポーツを楽しむなど、湾岸と違って、子どもが子どもらしくいられる場所だと感じます」

広々としたグラウンドで伸び伸びと遊ぶ子どもたちを見て、川口に引っ越してきて正解だったと夫婦ともに確信したという。新型コロナ禍を機にリモートワークが導入され、毎日出社する必要がなくなったことも後押ししたという。

「部屋の問題もありました。豊洲や勝どきでは1億数千万円出しても70平米の狭い部屋しか買えず、子どもが成長しても個室を与えてあげられません。中学生になっても異性のきょうだいが一緒の部屋に住んでいるケースもあると聞いて、ゾッとしました」

ところが川口では8,000万円も出せば、90平米の広々とした部屋が買える。狭い土地にタワマンが林立する湾岸と異なり、高い建物が少ない川口のタワマンは眺望もスッキリしているという。

川口のタワマンに値上がりは期待できなくても「後悔ゼロ」の理由

もっとも、資産価値という点では、豊洲のタワマンのほうが埼玉に比べて圧倒的に有利であることは事実だ。青天井でマンション価格が上昇している東京と異なり、埼玉のマンションは上限価格がはっきりしており、1億円を超えることは稀だ。男性は「川口の家に関して値上がりは期待していない」と断言する。  

「家族が過ごす家を投資先として考えている人たちには理解できないかもしれないし、確かに豊洲のほうが資産価値は高いかもしれないけれど、ストレスを抱えながら10年以上暮らすよりは全然いいかな」と話す男性は気負っておらず、自然体だ。

値上がりが著しい豊洲のタワマンでも、そこに住み続けている限り、その「含み益」は取り出すことができない。そのため住宅ローンの返済や子どもの教育費で日々の生活はカツカツな人も多いという。

実際、豊洲のとあるタワマンでは理事会がエントランスにクリスマスツリーを設置しようとしたところ「そんな高額な支出は無駄でいますぐやめるべきだ」と一部の住民からクレームがあり、議論が紛糾しているという。

「維持費が高いといっても一戸あたり3,000円なのに、そんな支出すら惜しむ価値観の人たちと一緒に暮らしたくないですよね」と男性は笑うが、実際、豊洲では理事会に理不尽な言いがかりを付けるクレーマー気質の住民も多かったという。「いくら家の価格が高くなったといっても、所詮は湾岸。港区の低層階のマンションとは住民のレベルが違います。劣等感を抱えた人たちが暴れまわっているのかな」

結局、男性は豊洲のタワマンを売却して2,000万円以上の利益を得ることができたため、新居のローン負担は少なく、自動車を購入して週末は家族でドライブに行ったり、子どものスポーツの送迎をしたりする生活を送っているという。

「見栄を張って背伸びしたい人には湾岸のタワマンもいいんでしょうけど、そうじゃない人は埼玉に来たほうが幸せだと思いますよ」そう語る男性は、家族にとっての幸せを最優先にした結果で、引っ越して後悔はなにもないという。

著者:THE GOLD ONLINE編集部(タワマン取材班)

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