脳卒中や心筋梗塞を40代で突然起こしてしまう人の共通点

かつては、脳卒中や心筋梗塞を起こす人といえば、高齢者がほとんどでした。私が医師になった20年ほど前を振り返っても、40代で脳卒中や心筋梗塞を起こすというのはその原因となるなんらかの遺伝子を持っている特別なケース。「普通に」生活していれば、その年代で脳卒中などを起こすことはなかったのです。

 ところが今は違います。40代そこそこで脳卒中や心筋梗塞を起こし、救急搬送されてくる患者さんは珍しくなくなりました。それこそ、40歳を迎える前に発症する人もいるのです。

 そしてもうひとつ、かつてと大きく変わった点を挙げると、脳卒中や心筋梗塞を起こすまで、高血圧や高血糖などを指摘されたことがない人も少なからずいる点です。

■「自分は健康体」は大いなる勘違い

 脳卒中や心筋梗塞は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などを指摘されていたにもかかわらず適切な治療を受けず、また適切な対策を講じず放置していたためについに発症した――といった印象があるかと思います。しかし昨今は、脳卒中を起こすまで「自分は健康体だ」「体になんの問題もない」と考えていた患者さんが結構いるのです。脳卒中や心筋梗塞を起こして初めて、血圧や血糖値、コレステロール値や中性脂肪が高いと知るのです。

 これらの患者さんには、ある共通点が見られます。それは、中学、高校、大学時代に運動部や運動系のサークルに所属し、体を鍛えていたということ。大学を卒業し、比較的大手の企業に就職。仕事に邁進し、一方で交友関係も広く、運動をする時間が全くといっていいほどなくなってしまう。

 特に大学時代も運動部に所属していたような人は、お酒も結構飲めるタイプが多い。もともと飲めなかったけど、体育会系のノリの中で学生時代を過ごし、お酒をたくさん飲めるようになった人もいる。独身で給料を自由に使える人なら、お金があるから、好きなものを食べ、好きなものを飲みがち。栄養バランスを考えるよりも、がっつり系の肉中心で脂っこい料理を選び、仕事の終わりが遅いからと夜遅い時間に食べる。空腹なので量も多くなり、そしてお酒もたっぷり。

 移動は、仕事中もプライベートも車が多く、運動をするどころか1日の歩数も少なめ。仕事は忙しく、体力があるから、睡眠時間は短め……。

■学生時代の筋肉が脂肪に変わる

 こういった20代、30代を過ごすうちに体重は増えていく。学生時代に身についた筋肉が見事に脂肪に変わってしまうのです。「ヤバイかな」と頭の片隅で思っても、周囲にも“仲間”がいるから、すぐ「まぁ大丈夫」と考えてしまいます。むしろ飲み会の席では「学生時代から随分と太ってしまって」と笑い話にもしてしまうほどでしょう。

 この段階で健康診断を受けても、それほど数値は高くはなっておらず、自覚症状もありません。もし健康診断で引っ掛かったとしても、本人はおろか、医師も「数値は多少高いですが、まだ若いですし、生活を変えればなんとかなるでしょう」とさらりと伝える程度で、さほど深刻に捉えない。仕事が忙しいからと、その後、健康診断を受けないままに40代に突入してしまう。

 こういった人が迎えるのが、40代での脳卒中や心筋梗塞なのです。自覚がないままに動脈硬化が進行し、ある日、脳卒中や心筋梗塞で倒れて救急搬送される。本人は「突然の出来事」と思うかもしれませんが、脳卒中や心筋梗塞につながる「ドミノ倒し」は10年も20年も前から起こっているのです。

 どういう人が要注意なのか。いくつかの条件があります。

●昔はバリバリ運動をやっていた。今は忙しくてできないが、やろうと思えばいつでもできると考えている

●学生時代の「肉たっぷりで量多め」の食事習慣が変わらない。飲食店で「大盛り無料」と書いてあるのを見ると、つい頼んでしまう

●学生時代からかなり太った

●日常的に車移動、電車移動が多い

●夕食の時間が遅い。深夜に及ぶこともあり、空腹だからと食べ過ぎてしまう

●夕食が多いので朝食は抜き。昼は空腹なので、やはり食べすぎる

●健康診断をしばらく受けていない

 いかがでしょうか? 該当項目が多いほど、今すぐ生活を改めた方がいい。特に家系に糖尿病や高血圧、脂質異常症の人がいたり、脳卒中や心筋梗塞を起こしたことがある人がいるとリスクが高いと思われます。「今の生活のままでは、今後いつ脳卒中や心筋梗塞を起こしてもおかしくない」と注意すべきです。これらは将来的な認知症や心不全・腎不全などへの予防にもつながります。

(坂本昌也/国際医療福祉大学 病院教授 内科部長・地域連携部長)

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