脳梗塞やうつ病も!「耳鳴り」は体の危険信号

 耳の中で響く「ジージー」「ザーザー」「キーン」といった音-。ストレス社会を背景に、中高年世代に耳鳴りを訴える人が増えている。大半が本人にしか聞こえない自覚的耳鳴りだが、放置するうちに症状が悪化し、睡眠が妨げられ、うつ病にまで発展するケースもあるという。耳鳴りは、体が発する警告信号でもある。重大な疾患が隠れていることもある。専門医を受診し、原因を知ることが大切だ。

■理解されにくい

 耳鳴りには、本人にしか聞こえない自覚的耳鳴りと、心臓の鼓動や血液が流れる音など、体の内部に音源があり、聴診器などで音を聞くことができる他覚的耳鳴りの2種類がある。耳鳴り治療の世界的権威である埼玉医科大学名誉教授の坂田英治さんは「耳鳴りで悩む人の大半が自覚的耳鳴り。体のどこにも音源がないため、患者さんの苦痛が理解されないことも多いのです」という。

 自覚的な耳鳴りの主な原因は、耳の病気、神経や脳の病気、血圧の異常、ストレス過多など。

 「『ゴー』という低い音は、外耳(がいじ)や中耳(ちゅうじ)など、音の振動を伝える器官に障害がある場合に多く聞こえます。このタイプは比較的治りやすいですね」と坂田さん。

 「ジージー」「キーン」という高い音は、内耳(ないじ)や聴神経など、音を電気信号に変えて脳に伝える器官の障害が原因。この内耳性の耳鳴りは全体の約9割を占めるといわれ、「内耳や聴神経の異常な興奮によって引き起こされると考えられます」(同)。このタイプの耳鳴りでは、吐き気や胃の不快感といった症状も現れる。難聴やめまいを伴うことも少なくない。

■痛みを感じない

 ただし、「内耳には痛みを感じる神経がないため、自覚症状があっても痛みがないからと我慢し、症状を悪化させてしまうことも多い。治りにくい耳鳴りなので、早期の治療が大切」(同)。

 ほかに、脳の血管の一部に障害がある場合に聞こえる「ザーザー」という拍動性の耳鳴りなどもある。坂田さんは、「脳腫瘍や脳出血、脳梗塞など、生命にかかわる病気のシグナルとして起こる場合もあるので、絶対に放置しないでください」と警告する。

■生活習慣改善を

 耳鳴りの緩和・再発予防には、「ストレスを減らすなど、生活習慣を改善すること」(表)と坂田さん。発症からなるべく早い時期に適切な治療を受ければ、気にならない程度まで緩和できる可能性もある。「ステロイド剤を耳に注射する『中耳腔注入療法』(別項)を受けることで、症状が改善できた例も少なくない」(同)のだ。耳鳴りは完治が難しい病気。放置すれば、生活の質が下がり、うつ病をも引き起こしかねない。また、時間の経過で難聴が進行、耳が聞こえなくなることもある。まずは、専門医の診察を受けることが大切だ。

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