自動車ジャーナリストの草分けとされ、雑誌「カーグラフィック」の初代編集長だった小林彰太郎さんが先月28日、亡くなった。享年83。世を去る直前、ライフワークだった昭和期の貴重な車の写真を集めた著作を発刊した。「ぜいたく品」から「マイカー」へと時代とともに変容していく様を見守りながら、その思いは衰えることはなかった。
1929年、「小林富次郎商店(現ライオン)」創業家の一族として生まれた。「3歳から街を走る車を眺めていた」といい、大学時代から自動車ジャーナリストの道を志した。
卒業後、当時すでに発刊されていた自動車雑誌モーターマガジンにこれまで買った「ボロ車」遍歴にまつわるエッセーを寄稿。編集部の目にとまり、フリーライターとして歩み始めた。
実際に商品を買ってテストし、消費者目線で評価する、雑誌「暮しの手帖(てちょう)」に感銘を受け、モーターマガジンを飛び出して62年に発刊したのが「CARグラフィック」(当時)だ。メーカーの意向におもねらず、実際に運転した印象を文章で表現し、評価するスタイルを確立。自動車ファンの支持を拡大していった。