自動車各社 続々リバイバル、ミドル照準

■N360、ミラージュ、シーマ…
 自動車各社が、かつて一世を風靡(ふうび)した車名を復活させる。ホンダが軽自動車「Nシリーズ」、日産自動車が高級セダン「シーマ」、三菱自動車が小型車「ミラージュ」の名前を復活させる。三菱の「ディアマンテ」や、トヨタ自動車も新型スポーツカーで、かつてのブランド復活を検討している。若者の自動車離れが進む中で、当時の人気にあやかり、40代以上の車世代を呼び戻すのが狙いだ。
 ホンダが12月中旬に発売する軽「N BOX」は、同社が初めて量産した乗用車「N360」を引き継ぐ。軽自動車強化を打ち出す同社は「ホンダの軽が一番元気だったころを振り返ってやり直す」(峯川尚取締役常務執行役員)としており、N360の復刻版の発売も計画する。
 三菱のミラージュは平成12年に生産を終えたが、来夏、「低燃費で低価格」という当時と同じコンセプトで復活させる。ガソリン1リットル当たり30キロの低燃費と100万円前後の低価格で、第3のエコカーとしてアピールする。
 日産もバブル期を代表し、昨年8月に生産を中止した「シーマ」をハイブリッド車(HV)として来春再投入する。三菱は平成初期に人気だった「ディアマンテ」の車名を、日産からOEM(相手先ブランドによる生産)調達するセダンに利用することで調整しているほか、トヨタも来春発売の後輪駆動スポーツカー「FT-86」に、「レビン」「セリカ」などのブランドを検討中だ。
 車名は購入ターゲットの変更や販売ネットワークの統廃合、販売強化などの理由で廃止される。トヨタの「コロナ」「スプリンター」、日産の「ブルーバード」「セドリック」「グロリア」がなくなった一方、日産が「サニー」を中国発売の小型セダンに冠するなどの動きも出ている。
 車名復活は過去に人気があったブランドを使うことで一定の販売を確保したいという経営上の「安全策」の面がある。同時に、世界戦略車などでは、新車名が国によって商標問題などで使えないリスクを避けるメリットがある。
 第一生命経済研究所は「食品業界では定番商品に新しい味を追加したりする。車名変更もコストをかけずに販売強化する手段といえるが、車にはファンも多くリバイバル効果は大きい」(永浜利広主席エコノミスト)と分析する。

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