高速道路のサービスエリアや過去10年位にできた新しいショッピングモールの駐車場には必ず、身障者用の駐車場が備えられている。2006年に施行されたバリアフリー新法によって、「障害者等用駐車区画」の設置が一定規模の施設に義務付けられたことが大きな理由だ。しかし、残念ながら「障害者等用駐車区画」の不正利用は後を絶たない。世界に名だたる自動車先進国でありながら、“自動車民度”が相変わらず低い日本。国が何もしないので、地方自治体が動き始めていることにも注目したい。
■車椅子マークの本当の意味とは?
健常者はもちろん、身障者も正確に理解してない人が多いのだが、100均でも手軽に入手できる青地に白の車いすマークはそもそもクルマに貼って駐車免罪符にするものではない。正式名称を「国際シンボルマーク」と言い、これは障害者が利用できる「建築物や施設」であることを示すマークなのである。クルマに使うべきものではないのだ。それを身障者が使うならまだしも、健常者が障害者用駐車場に駐車するために付けるという、非常に腹立たしいケースも日常の光景になった。そしてひどいことにこれには罰則規定がない。せいぜい警備員に注意される程度だ。(注意されたところで、そういうところに停めるヤカラは、逆切れするのがオチ。反省等するはずもない)
■アメリカでは、私有地であっても駐車禁止の取り締まり対象になる!
筆者が10年前に体験したことだが、変形性膝関節症によりクルマ椅子利用の母(身体障碍者手帳あり)を連れてアメリカ旅行に行ったときのこと。ロサンゼルスの日系ホテル内にある身障者用駐車スペースに当然のように停めていたのだが…なんと3日目に駐車禁止で取り締まられてしまった。罰金は250ドル!なんで?私有地なのに?慌ててフロントの日本人スタッフに相談すると、ホテルの日本人オーナーが一緒に警察に行って、旅行者である故、罰金を免除してもらえるよう交渉してくれるという。
結論から言えば事なきを得たのだが、アメリカでは政府が発行する駐車許可証を持っている者だけが身障者用駐車場に停めることができて、それがなければ処罰の対象になるのだ。お店やホテルなどの私有地であっても容赦ない(アメリカと日本では車椅子の利用の仕方がかなり違っていて、アメリカでは身障者が自ら車を運転して目的地の駐車場に停めるケースがほとんどという事情もあるが)。
■日本は国が何もしないので、地方自治体が動き始めている!
バリアフリー新法が施行されて10年経過したが、相変わらずマナーの悪い、民度の低い健常者ドライバーは全く減っていない。国はなぜ放置しているのか?と、検索してみると平成14年の第154回国会にて「障害者用駐車ますに駐車する健常者に対する罰則規定の新設に関する請願」が行われたようである。15年も前だ!しかし、その後、この件について国会で取り上げられることはなかった模様……。
そこで、動き始めたのが地方自治体である。2006年、佐賀県の「パーキングパーミット」(身障者用駐車場利用証)制度が口火を切った。これは、本当に身障者用駐車場を必要とする人に県内で共通の「利用証」を交付することで、駐車場利用者を明確にし、駐車スペースを確保する制度である。佐賀県から始まり、2017年6月現在は36府県2市で同様の制度が実施されるまでに拡大した。(東京・神奈川・千葉・愛知など大都市を抱える都県はこの制度は無し!)制度実施自治体間による利用証相互利用も可能となっている。
■「駐車禁止除外指定車標章」の不正使用も大問題
身障者用駐車スペースへの健常者の駐車に関しては何も罰則がないのが現状だが、公安委員会より身障者に発行される「駐車禁止除外指定車標章」の不正使用は、取り締まりの対象となっている。2016年に大阪府警が府内全域で初の一斉取り締まりを実施した際には、なんと標章を置いていた車126台のうち約4割が不正使用だったという。ここでいう不正使用とは車を路上駐車する際、障害者本人が同乗していないのに標章を掲示し、通勤や買い物などの目的で使っているという状況のこと。標章の不正使用を確認したドライバーには交通反則切符(青切符)が交付されたそう。
これはこれで確かに悪質であるけれど、実際は自ら運転して身障者用駐車スペースに停める必要がある場所に、平気な顔をして置いている健常者の方が罰則はなくても悪質で迷惑ではないかと思う。