ガソリン1リットル当たりの走行距離を示すのが自動車の燃費である。
各自動車メーカーがカタログなどに表示している燃費は、実際に走った時よりはるかに良いのが公然の秘密だった。
消費者が車を購入する際に、燃費は重要な判断材料の一つとなる。現実に合わせて見直すのは当然であろう。
国土交通省が、燃費を測定するこれまでの方式を改め、4月以降に発売する車から、新方式による表示をメーカーに義務付ける。
現在の方法は、国の試験場の測定器のローラーに車を載せ、一定の走行パターンでタイヤを回転させて測る仕組みだ。
エンジンが温まった状態から計測するため、燃費が高めに算出される傾向がある。
同省がまとめた燃費ランキングでは、トヨタ自動車のハイブリッド車(HV)のプリウスが1位で1リットル当たり38キロ・メートルだ。
しかし、プリウスのユーザーの多くは、実際の燃費はこれより悪い、と指摘する。他メーカーの車でも状況は同じだ。
環境にやさしいエコカーは人気がある。自動車各社が燃費の良さを競っているが、実態がこれでは「燃費の数値が操作されている」と言われても仕方あるまい。
新たな測定方式では、エンジンが冷えた状態から発進したり、加減速を繰り返す複雑な走行パターンを取り入れたりする。実走行と公表値の燃費が 乖離 ( かいり ) しないよう、実態に近い状況で測定する。
この結果、新方式の燃費は、現行方式より1割強ほど数値が低くなる見通しだ。プリウスの場合も燃費は1リットル当たり32・6キロ・メートルに下がるという。
トヨタなど各社はすでに新方式を先取りし、一部車種のカタログなどに新旧両方式の燃費を併記し始めた。だが、燃費の新しい表示の仕組みについての認知度はまだ低い。国とメーカーは、周知徹底を図ってほしい。
日米欧などで、燃費の測定方式が違う問題も放置できない。
国連が2013年を目標に、国際的な基準の統一を検討中だが、対応を急ぐべきである。
電気自動車(EV)の普及も始まり、ガソリン車と電気自動車間の競争は激しくなりそうだ。
EVでは、フル充電した時の走行距離が性能表示に使われている。EVで燃費に相当するのが「電費」だが、計測方法は手つかずだ。この手法の統一も、いずれ取り組まざるを得ない課題だ。