自工会(日本自動車工業会)は9月21日、定例会見を開催した。会見には、豊田章男会長はじめ、内田誠副会長、三部敏宏副会長、鈴木俊宏副会長、日髙祥博副会長、片山正則副会長、佐藤恒治副会長、永塚誠一副会長ら自工会の首脳陣が出席した。
豊田章男会長は会見冒頭にあいさつを行ない、10月26日から始まる東京モーターショー改めジャパンモビリティショーへの期待を語った。この豊田会長のあいさつは、2018年5月、自身が二度目の自工会会長に就任した時期への振り返りから始まった。
豊田章男 自工会会長 あいさつ
本日は1か月後に迫ってまいりましたジャパンモビリティショーについてお話をさせていただきたいと思います。少し時計の針を戻しまして、2018年5月、私が2度目の自工会会長に就任した当時の状況からお話いたします。
当時の自動車業界は、CASE革命により100年に一度と言われる大変革期に突入したところでした。次の100年もクルマはモビリティ社会の主役でいられるのか? これが私たちに突き詰められた命題であり、その象徴が来場者数が減少し続けてきた東京モーターショーだったと思います。
私が自工会会長として最初に取り組んだテーマが、2019年に開催を控えた東京モーターショー改革でした。私が関係者に伝えたことはただ一つ。「人が集まるモーターショーにチャレンジしよう」、それだけでした。経済協議会と連携し、日本の最新技術や未来を体感いただくフューチャーエキスポ、ドローンショーやeモータースポーツ大会など、みんながやりたい、面白いと思う企画には、すべてゴーサインを出しました。その結果、130万人ものお客さまにご来場いただき、多くの笑顔をいただくことができました。
しかし、その2か月後、私たちはコロナという未曾有の危機に直面することになります。移動すること。集まることが悪になり、私たちの日常は一変しました。しかし、失ったものばかりではありませんでした。私達自動車産業でいえば、これまで当たり前だと思っていた移動が、実は多くの人たちの働きによって支えられていることに気づくことができたと思います。
そして、クルマを走らせる550万人が近づき、つながり、1つになって動き始めました。私達の暮らしで言えば、みんなが新しいコミュニケーション手段を求めた結果、オンラインミーティングやフードデリバリーなど、つながるための新しい技術、サービスが大きく進化いたしました。
コロナ危機を乗り越えた今、東京モーターショー改革をさらに一歩前に進めるという決意を込めて、本年からジャパンモビリティショーに進化させてまいります。クルマからモビリティへ、東京からジャパンへ、特にジャパン。日本には素晴らしい技術がたくさんあります。未来を作るために日々挑戦を続けておられる経営者もたくさんおられます。そんな人や技術が集まり、つながる場所を作りたい。日本発の未来を世界に発信したい。そんな思いを「ジャパン」という言葉に込めました。今回のショーでは過去最多となる400社以上の方々にご参加いただくことができました。
スタートアップ企業と既存の企業をマッチングし、新しいビジネスの機会を提供することも考えております。また、モビリティが実現する、未来や街を体感できる東京フューチャーツアーや、水素エネルギーを使ったエンタメイベントなど楽しい企画を予定しております。
「乗りたい未来を、探しにいこう!」。これが今回のテーマです。これから実際にショーに登場する未来のモビリティや、参加アーティスト、トークショーの支援者など続々と情報を発信してまいりますので、ぜひ乗りたい未来を探しに会場へお越しください。
自工会としてもこの場にいるトップが中心となって、全力でショーを盛り上げ、今回も100万人を超える方々にご来場いただきたいと思っております。私自身、時間が許す限り、会場に足を運び、笑顔とありがとうの連鎖を作りたいと考えております。
自動車はみんなで一緒にやる産業。未来はみんなで作るものだと思います。日本の未来を、よりよいものにするために、メディアのみなさまからもぜひ応援いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
東京モーターショー出展社数
「自動車を軸にして、一緒に未来を作って、日本を元気に」
世界各国でモーターショーの地盤沈下が続く中、東京モーターショーは2019年に来場者を増やすことに成功した。自工会は、それをモビリティ分野まで拡大するジャパンモビリティショーとすることで、新しいクルマの世界を作ろうとしている。
参加企業が、前回の倍の400社。さらにそのうち100社は、スタートアップ企業ということで、現時点ではジャパンモビリティショーへの進化で新しい動きが始まったように見える。
この400社が集まったことについて豊田章男会長に、現時点の思いを聞いたところ、以下のよう答えていただいた。
──東京モーターショーからジャパンモビリティショーになることで、前回の倍となる400社の出展社、スタートアップ企業100社も含めて集まりました。このように多くの参加企業が集まったことについての思いを教えてください。
豊田章男会長:前回の東京モーターショーもご存知だったと思いますが、世界中のモーターショーがですね、どんどんどんどん来場者が減っていく中で、東京だけ100万人を超え、130万人の来場者が得られたと思います。
そこで我々自動車工業会としては、いろいろな見本市がこの日本である中で、自動車を軸にすると100万人集まるよ、それを経済協議会系で、日本の技術・人材を紹介させていただきました。
今回もその流れで日本全体を元気にさせたい。そのためには自動車業界をあてにしてほしい。そんな思いを持って、先ほど内田副会長からもありましたように、今回も100万人を超える来場者にはこだわっております。
モーターショーと言ってた時代は、新車発表やワールドプレミアとしての役割がメインであったと思います。けれども今回、モビリティショーと変えましたのは、「乗りたい未来を、探しにいこいう!」というキャッチフレーズ、それこそがカーボンニュートラル、そして自動運転、いろいろな話題が出てくる中で、自動車業界だけで未来を作るものではなくて、使っていただく方、利用される方、みんなで未来は作っていくものだと思っております。
そんな問題提起をするのが一つ。
そしてもう一つは、やっぱり未来を作るのは、既存の企業だけではなくて、これから未来を作ることに参加をしたいというところに、「この指とまれ」が必要だというふうに思っております。
(今回のモビリティショーでは)「この指とまれ」と言ったところ、過去に例のない400社を超える参加がきている、ということにぜひともご注目いただきたいと思います。
開催中にいろんな物語が起きるのではないかなと思っています。副会長のみなさんとも協力し、かついろいろな業界の方々にもご参加いただきながら、自動車を軸にして、一緒に未来を作って、日本を元気にしていこうと思いも込めてジャパンモビリティショーと名付けております。
なお、この会見において、日野自動車がCJPTから除名されているままになっていることについての質問もあり、それについては「日野が信頼回復に真摯に取り組んでいること、それに対する世間の評価などを鑑み、カーボンニュートラルや物流課題の解決に向けては、日野の力も必要」と、自工会の理事会で判断。最終的にはCJPTが判断するものの、自工会として日野の再加盟をCJPTに申し入れたことが報告された。