自民党が中国をけん制する動きを次々に打ち出している。沖縄県・尖閣諸島の実効支配強化を掲げる保守系の勉強会と、中国が統制を強める香港の人権問題に取り組む議員連盟が29日に始動。経済安全保障の観点から中国系アプリの利用制限も検討する。政府を後押しする狙いもあるが、日中関係に一定の緊張をもたらしそうだ。
稲田朋美幹事長代行ら自民党の保守系11人が呼び掛け人となった「尖閣諸島の実効支配を進める会」(仮称)は29日、衆院議員会館で準備会合を開催した。中国公船が尖閣海域への侵入を100日以上続けていることに対抗し、尖閣での学術調査に関する法整備を図る。調査団の上陸を視野に入れており、中国側の反発は必至だ。
稲田氏は会合で、尖閣諸島について「施政権は日本にあり、(米国の対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約5条が適用されると言い続けてきたが、施政権すら危うい状況にある」と危機感を示した。
この日は中谷元・元防衛相らが国民民主党や日本維新の会などの議員と組んだ「対中政策に関する国会議員連盟」も設立総会を開いた。中谷氏は中国の香港国家安全維持法を批判し、人権侵害に対する調査や制裁を内容とする議員立法を目指す考えを表明。検討項目として「香港市民を弾圧した個人・組織の入国制限、資産凍結、国際司法裁判所への提起」を挙げた。 © 時事通信 提供 「対中政策に関する国会議員連盟」設立総会であいさつする自民党の中谷元・元防衛相(左から2人目)=29日午後、衆院議員会館
一方、自民党のルール形成戦略議員連盟(会長・甘利明税調会長)は28日の会合で、中国企業傘下の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を念頭に、中国系アプリの利用制限を政府に求める提言の取りまとめに着手した。同アプリによる個人情報流出に懸念を示す米国と足並みをそろえ、規制強化を進める構えだ。
今春までは安倍政権が習近平国家主席の国賓来日を目指してきたため、中国を「覇権主義」と非難するタカ派議員も抑制的な対応を続けてきた。来日の延期や米国の対中圧力強化を受け、動きを活発化させたようだ。
自民党幹部の一人は対中強硬論の広がりを歓迎。「党内から意見が出ると政府は交渉しやすくなる」と述べ、側面支援につながるとの認識を示した。