10月22日に投開票された衆議院議員選挙で、自民党が圧勝した。翌朝の新聞各紙は、その勝利をどのような論調で報じたのか。BuzzFeed Newsは、全国紙などの社説を比較した。【BuzzFeed Japan / 籏智広太】
読売新聞は、「衆院選自民大勝」との見出しをつけつつも、「『驕り』排して丁寧な政権運営を」と釘を刺している。
今回の選挙結果に現れた民意は「安倍政権のすべてを支持するほどではない。だが、政治の安定を維持し、経済再生や日本の安全確保できちんと結果を出してほしい」というものだと分析。
公示直後の世論調査で不支持率の方が高かった事を引き合いに出し、あくまでこれは、「首相の全面支持」ではなく、「与党の政権担当能力が支持されたのは確かだが、野党の敵失に救われた面も大きい」とみている。
そのうえで、「安倍政権の驕りに再び目につけば、国民の支持が一気に離れてもおかしくない」とし、首相に対し「丁寧かつ謙虚な政権運営」を求めた。
一方、「憲法改正論議を活発に」という点に関しても言及。「各党も、無為に議論を先送りせず、自らの見解を策定するべき」とし、「超党派の合意形成」が必要であると強調した。
朝日新聞は、今回の解散が「森友・加計問題への追及をかわす大義なき解散」としつつ、「みずから仕掛けた『権力ゲーム』に、首相は勝った」と強調。
「政権継続を選んだ民意も多様だ」として、世論調査結果で首相の続投を望む声が少ない事などに言及し、「おごりと緩みが見える『1強政治』ではなく、与野党の均衡ある政治を求める」民意が読み取れる、とした。
今回の選挙結果は、「民進党の前原誠司代表と希望の党の小池百合子代表の政略優先の姿勢」が招いたものである、と指摘。「多くの有権者が不信感を抱いた」と指摘した。
また、首相が「改憲に本腰を入れるだろう」ともみる。そのうえで、「短兵急な議論は民意の分断を深めかねない」として、「超党派による議論の積み上げ」が必要だ、とした。
一方、「首相は勘違いをしてはならない」と、選挙結果が「白紙委任」ではないとも釘を刺した。「勝ったらリセット、とはいかない」とし、憲法論議の前に、森友・加計問題に対する首相の丁寧な説明が必要であると求めている。
毎日新聞は、「今回の選挙が『安倍1強』を継続させるか否かの選択であった」と強調。「首相の役割は特定のイデオロギーへの奉仕ではない」とし、「おごることなく、恵まれた政治資源を国民のためにこそ活用すべきだ」とした。
今回の選挙については、「小池氏の劇場型手法に多くの有権者が不安を抱き、自民党を『よりまし』と判断した」と分析。
そのうえで、「安倍首相の最終目標が憲法改正にあることは疑いの余地がない」とも指摘。「広く国民の同意を得」るために、「建設的議論を深めるべきだろう」と求めた。
また、「これまでの『安倍政治』の手法や中身を改め、押しつけ型の政権運営を見直す必要がある」と釘を刺すと同時に、森友・加計問題については「選挙での勝利を口実として、過去の問題だと片付けるべきではない」と強調。
国会で緊張感を作り出すために「野党の姿勢がカギを握る」とし、躍進した立憲民主党などによる「建設的な政策論争」に期待した。
日経新聞は冒頭から「この1ヶ月の大騒ぎは何だったのだろうか」と指摘。「選挙戦の当事者たちは我が身の生き残りに必死だったのだろうが、有権者が頭を悩ますようなしっかりとした選択肢が提供されたとは言い難かった」と辛口の評を呈した。
選挙結果については、「いちばんの責任は民進党の前原代表にある」と名指し。解散当時の「土壇場」で「できたてほやほやの新党」に合流を決めたことは、「あまりにも奇策だった」と指摘。「有権者に『選挙目当て』とすぐに見透かされ」た、とした。
また、希望の党・小池代表の「排除」の理論は「当然であり、そのことは批判しない」としつつも、自らが出馬しなかった姿勢については「自身の影響力を過大評価していた」と言い切った。
そのうえで、「この選挙をひとことで総括すれば、『野党の自滅』である」とまとめ、自民党と公明党に対して「『与党の勝利』『安倍政権への全面承認』と受け止めているとしたら、大いなる勘違いである」と強調した。
森友・加計問題の「『みそぎが済んだ』などと浮かれないこと」の大切さを解き、「『初の憲法改正』という宿願ばかり追い求め」て、経済の再生と国民の暮らしを守るという「原点を置き去りにしてはならない」と釘を刺した。
産経新聞は冒頭から、今回の選挙結果が北朝鮮問題や少子高齢化などの「国難を乗り越える」という安倍首相の訴えに対して「国民は強い支持を与えた」ものだ、と強調した。
今回の結果は民進党の「分解」が「明確な対立軸や危機克服の具体策を示すことなく終わった」ことによるもの、と分析。野党は「政権の受け皿として、大きな支持を得る勢力とはなり得なかった」とみる。
そのうえで、目下重要な課題が北朝鮮問題であるため、「ミサイル防衛の充実にとどまらず、敵基地攻撃能力の導入や防衛予算の増額への政治決断も求めたい」との持論を展開した。
そうした状況があるからこそ、「9条改正をためらうな」とも指摘。「安倍首相と自民党は、憲法改正という公約実現への努力を止めてはならない」とし、公明党と改憲に前向きな野党との「協議も加速する必要がある」とした。
さらに「もう一つの国難」である少子高齢化対策などについても早急な対応を求め、「政府・与党に選挙の勝利に浮かれているいとまはない」とし、「舵取りを間違えられない荒波を進んでいるとの認識が常に必要である」とエールを送った。
東京新聞はまず、期日前投票が過去最高になったことに言及し、「先人が勝ち得てきた貴重な選挙権だ。無駄にしてはならない、との熱い思いを感じざるを得ない」と振り返った。
選挙結果により、「安倍首相が積極的に支持されたと断言するのは早計だろう」と強調。森友・加計問題への説明が選挙戦でなされなかったことを批判し、「わずか二ヶ月前、深い反省やおわびを表明した首相の低姿勢はどこに行ってしまったのか」とした。
また、「小池氏の準備不足や民進党の混乱を見越した解散なら、選挙戦略としては巧妙」としつつ、「首相としては誠実と言えない」と指摘。「立憲民主党の伸長は、安倍政権に対する批判の強さと受け止めるべき」とした。
憲法改正については、「『改憲派』の各党」にも違いがあるとし、「日程ありきで拙速に議論を進めるべきではない」とも求めた。
そのうえで、森友・加計問題について「選挙を経たからといって免責されるわけでもない」と釘を刺し、首相自身の「謙虚に、丁寧に、国民の負託に応えるために全力を尽くす」という言葉を引用し、結んだ。