自然エネ 東京と東北が連携 電力需給で共存共栄

自然エネルギーで発電した電力の需給を通して、東京と東北が連携する取り組みが始まった。港区は白河市と山形県庄内町、目黒区は気仙沼市とそれぞれ手を携え4月、区有施設で使用する。大消費地のため地球温暖化対策に限界がある都心部と自然エネが豊富な地方がつながる先進的な動きとなる。専門家は「食料と同じように自然な流れ」と広がりを期待する。

港区と白河市は3月19日、再生可能エネルギーの活用に向けた協定を結んだ。区は2018年度、市内の太陽光パネルでつくった電気を年間約43万キロワット時受け取り、複合施設や保育所8カ所で利用する計画。
武井雅昭区長は「区内で再エネの十分な調達は困難。地方の再エネ導入が最も合理的で効果的」と強調。鈴木和夫市長は「二酸化炭素の排出削減はもちろん、大都市と地方が共存共栄できる環境をつくる第一歩」と意気込む。双方は取り立てて縁がなく、今後は観光や産業、教育面の交流に発展させていく考えだ。
区は庄内町とも3月27日に協定を締結し、早ければ19年度に町内の風力発電による電力の供給を受ける。
目黒区も4月、気仙沼地域エネルギー開発(気仙沼市)の間伐材を燃料にする木質バイオマス発電の電気を買い始める。
両自治体は10年、落語「目黒のさんま」にちなみ友好都市になった。毎年秋の「目黒のさんま祭」に加え、東日本大震災後は区が市に応援職員の派遣を続ける。
気仙沼発の電力は区の複合施設「田道(でんどう)ふれあい館」、自然宿泊体験教室を市内で行う小中学校など33カ所で使う。電気代は年間約50万円を節減できると試算する。
区の担当者は「復興支援をうたうには恥ずかしいが、間伐で山をしっかり手入れすれば『森は海の恋人』で有名な気仙沼の漁業にも役立つ」と説明する。
「ご当地電力」が掲げるエネルギーの地産地消から一歩踏み出した試み。いずれも、福岡県みやま市を主体に設立された「みやまスマートエネルギー」が電力の売買を仲介する。
国内外の事情に詳しい立命館大のラウパッハ・スミヤ・ヨーク教授(国際産業論)は「大手電力会社からではなく、再エネの発電事業者から調達することは利益や雇用という恩恵が地域に回り、地方経済を活性化させる。まだ規模は小さく地域電力の連携がますます重要になる」と語る。
活用拡大の課題として(1)割高な発電コストを下げる規制緩和(2)再エネ事業者の優先的な送電網接続(3)分散型エネルギーシステムへの政策転換-を提言する

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