自転車運転、ルール違反急増 警告3万件 宮城

エコ意識の浸透や健康志向で自転車への関心が高まる中、運転する人のルール違反が急増、事故も目立っている。宮城県警によると、県内で今年、無灯火などの道交法違反で警告した件数は8月末現在で3万件余りに上り、昨年同期比で約1万2000件の増加。事故で賠償を求められるケースもあるというが保険制度の認知度は低く、自転車をめぐる課題として浮上している。
 県警交通指導課によると、自転車側に明らかに過失があり、歩行者がはねられてけがをした事故は今年6件。県警が重過失傷害などの疑いで、自転車利用者を書類送検したケースが4件あった。
 自転車を運転中の死傷者も増加傾向にあり、8月末現在で3人が死亡し、負傷者は1087人。死傷者の半数に信号無視や一時不停止などの道交法違反があった。
 事故は通勤通学の時間帯に多発している。対自動車のほか、自転車同士や対歩行者などさまざまで、発生場所は交差点が多いという。
 事故の原因について、県警の委託で4月以降、自転車安全利用指導員として仙台市内の街頭に立つ平山哲夫さん(62)=宮城野区=は「運転者の大半がルールやマナーを理解していないことが要因」とみる。
 平山さんら12人の指導員は通勤通学の時間帯を中心に、交通量の多い交差点などで安全運転を訴えてきた。傘差し運転や猛スピードでの走行など無謀な運転が目についたという。平山さんは「運転には大きな責任を伴うことを自覚してほしい」と語る。
 自転車には自賠責保険のような強制加入保険制度がなく、被害者への賠償が問題となるケースも全国で増えている。
 ただ、任意保険はほとんど認知されていないのが実情だ。全労済宮城県本部の関係機関「ぐりんぼう仙台」によると、自動車共済の契約は4月末で約2万8千件だが、このうち「自転車賠償責任補償特約」を付けたのは約6%にとどまる。
 財団法人日本交通管理技術協会は、協会の検定に合格した自転車安全整備士が有料の点検整備をした際に「TSマーク」を自転車に付け、対人死傷で最高2000万円を補償する保険制度を設けているが、浸透していない。青葉区で自転車店を約35年間営む庄司武志さん(68)は「制度を知るお客さんはごくわずか」と語る。
 県警は「自転車ブームともいわれる。ルールやマナーを守って利用してほしい」と呼び掛けている。
<メ モ> 自転車は道交法で「軽車両」と定められ、車道の左側を走るのが原則。飲酒運転や2人乗り、並進は禁止されている。宮城県道路交通規則は傘差しや携帯電話の通話・操作、ヘッドホンで音楽を聴きながらの運転を禁じており、悪質な違反者には5万円以下の罰金が科される。自転車が歩道を通行できるのは(1)13歳未満の子どもや70歳以上の人(2)車道通行が危険な時(3)歩道上に「通行可」の道路標示がある―などに限られる。

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